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シェイプ・オブ・ウォーターのLudovicoMedのネタバレレビュー・内容・結末

4.1

このレビューはネタバレを含みます

こんなに芸術性が前面に出た映画がアカデミー賞に選ばれるなんて本当に素晴らしいと思う。
序盤でナレーションが入り「物語」を文字通り本のように語っていく作りになっている。
この「物語」自体が非常に重要になっていて、現実の話なのに寓話やおとぎ話的な一面があり、唐突にファンタジー描写が現れたり、話の展開もケレン味に溢れている。
ライフオブパイやグランドブダペストホテルなどの語り口とも似ている。

その効果のためデルトロワールドを存分に味わえるし、水の表現やある場面で主人公の見てる世界がガラッと変わって訪れるミュージカルシーンも本当に美しい。
音楽もジャズを含んだサイレント映画型ミュージックが素敵な雰囲気を出してます。

本作は主要人物が社会に対してマイノリティ側の視点で描かれている。
つまりこれは、トランプ政権の現代社会にも通じるメタファーで、普遍的な政治問題も映し出している。
ゆえに、様々な視点から深読みできたり人によって感じ方とらえ方も変わる間口の広い作品だと思う。

「シェイプオブウォーター = 水の形」とは形にないものを表してるのだと思う。
これは、冒頭でのタイトルシーンではシェイプオブウォーターという絵本を開いていき「物語」が始まっていく予感を感じるオープニングだが、ラストでは、「姿は見えなくても愛を感じることはできる」のナレーションにあるように、形にないもの、愛そのものを表してるとも感じ、エンドロール前のタイトルシーンが入る。
観客はここでタイトルの本当の意味を知ることができる。
これは、寓話ベースのこの演出だからこそできる表現だし、社会風刺の絡め方やセリフでは伝えられない表現主義なファンタジー要素が非常に上手く生きてる。

デルトロ作品にまた一つ傑作が増えたと思いました。
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