このレビューはネタバレを含みます
これは!ずるい!
感動しないわけないでしょう!
もともとクイーンの楽曲って合唱やオーケストラ、クラシックのように絶妙に音を重ね、ドラマティックかつ覚えやすい。
CMや、サントラでもよく使われ、耳にしてきた。そして刷り込まれてきた。
そこに英語を知らなくても、耳に残り口ずさみやすいメロディライン。
ものすごく頭のいい人と、ものすごく研ぎ澄まされた感性を持った人が、聞く側のカラダや心の高揚や落ち着きを意識しながら作ってるんじゃないかなってことは薄々わかる。
「クイーンのことは知らなかったけど曲は聞いたことがあった。よくわからないけど涙が出た」と、うちの娘をはじめ若い人がどんどんクイーンにはまっていると聞くと、そりゃあそうでしょう、と思う。
その楽曲と映像の合わせ方がお見事。オープニングの20センチュリーFOXのファンファーレ含めてね。
ライブエイドの会場に向かうフレディの背を追いかけるように「Somebody To Love」が流れ、フレディの目を通したライブ会場の視界がひらけるか、と、…。
そこからフレディの「愛を探し求めた」物語が始まる。
…なにこれ!
このプロローグからしてすばらしく劇的。ここでラストの怒涛のライブエイドで泣かせに来る時限爆弾を埋めてきてる。
感動しないわけないでしょう!
結成、デビュー、ヒット、世界ツアー。バンドのごたごた、そして復活ライブ。
その間のフレディのプライベートも、毒の部分はうまーくそぎ落としてるように感じました。
辛かったでしょう、さみしかったでしょう、と見せるさじ加減が絶妙で、裏読み深読みすらさせない。
これは制作にあたって大きな立場にいたブライアン・メイとロジャー・テイラー本人が、フレディ自身を、フレディが残したものを尊重し、いまでも変わらず愛している証拠なんだろうなぁと思う。
死後も肉親やスタッフのお金儲けのネタにされたり、プライベートを売られたりしてきたMJと雲泥の差。
そうだなぁ、この先、二匹目、三匹目のどじょうを狙ってMJやプリンスとか、SMAPとか(え?)音楽と伝記のコラボ作品がつくられたとしても、この「ボヘミアンラプソディ」を超えることはないと思う。フレディのひととなり、音楽の素晴らしさ、それとまわりのメンバーやスタッフの普遍の尊敬と愛情があってのこの作品だと思う。
思えば、けんかや諍い、フレディの暴走なんかのシーンがあって「バンドあるある」なシーンも、どこかファミリーな雰囲気があった。
田舎で合宿してレコーディングをする場面、朝食の場で「何の曲をいれるか」ってメンバーがもめてる時にフレディが「おはよう」って入ってきたり、フレディの遅刻を咎めるメンバーを「地獄へ道連れ」のベースラインでディーコンがいなす場面など「バンドあるある」というより「家族あるある」。
ピュアなフレディには生きにくい時代だったのだな、現代のわたしたちが想像するよりずっと。
時に保護者になり、ときに言いたいこと言い合える兄弟になり、迷走して荒れてるときはそっと距離をおき、でも帰ってくるのを信じてるメンバーのファミリー感がすごい。
おそらく、こんな時代ということもあってすごく悩み苦しんだだろうメアリーやジム・ハットンとの愛。
家族の関係の描写も、意外なほどするするするっとへいばんに描かれ、このあたりも、まぁ多少の編集アリでしょうと思いつつも。
しかしフレディほどの人でもカミングアウトできない、そんな時代だったのか。
今の時代であれば、と思った。持って生まれた出自、移民や宗教は根深いとしても、エイズ治療もセクシャリティについて、フレディの時代より、現代はわずかながら変わってきているのでは?
でも彼らの残した楽曲は変わらない。受ける世代がかわっても、変わらずに響くってのが、またすごい。
ラスト20分のライブシーン。
「ボ・ラプ ― Radio Ga Ga ― Hammer To Fall ― We Are the Champion」当時そのままのセトリなんだろうけど、これ神がかってません?
完全コピーで見せるメンバー(役者)の素晴らしいこと。うちに帰ってYouTubeで当時の映像を探して見比べちゃいました。
We Are the Champion のラストの音がフェイドアウトすると同時に、歓声の中、フレディがメンバーの方を向き視界から消える、ディーコンが消える、そしてテイラーとメイの二人が残る演出でどわーっと涙がでてるところ追い打ちをかけるように、エンドロールで本人映像を使った「Don't stop me now」と「Show must go on」。
もうこれだけを観にあと3回ぐらい通っても良い。と思いました。
せっかく見るのなら少しでも大きなスクリーンで、いい音響で、と貪欲になっていく・・・。
まぁ、でも一番「すごい、あっぱれです」とわたしが思うのは、この各方面の重圧を背負ってフレディ役を請け、演じ切り、さらには当時の関係者やメンバーやファン、誰からも文句を言わせず、むしろ絶賛を博したラミ・マレックです。
フレディのステージアクション。目が泳いだり、輝いたり、震えたり、そんな表情まで似せてきてる。フレディの顔を良く知らない私ですが、ラミの本当の顔を忘れてしまう。
制作されると聞いてから、ずいぶん日が経ったような気がします。
配役が決まるまでぐるぐるといろんな名前が出たり、噂が出たり、監督がかわったり…、
ここに至るまでのラミのプレッシャー、どれだけの努力をしたのか、想像するだけで涙がでます。良く頑張りました!
(GG賞ノミネートうれしかったー!)
フレディ以外のメンバーもそっくりで驚いた。
あと地味にライブエイドの募金電話シーンのボブ・ゲルドフ、あれ本人かと思ったわ。