horahuki

テルマのhorahukiのレビュー・感想・評価

テルマ(2017年製作の映画)
4.3
これは怖ぇわ…。
女子大生の内に秘めた欲望が爆発する北欧産サイキックホラー。

めちゃくちゃ面白い!!
オンライン試写会落ちちゃったので、劇場で観てきました!正直あんまり期待してなかったんですけど、ビックリするくらい面白かった!青山シアターのオンライン試写会って期限内なら何回でも見れるんかな。もう一回見たい♫

内容的には『RAW』のような少女変容の物語。そこに『ウィッチ』的なキリスト教・魔女成分を足したみたいな感じですかね。

私的には『RAW』は自身のアイデンティティと向き合い、それを受け入れることを変容・成長として描き、その拒絶と受容で揺れ動く思春期心理を描いた作品だと思っています。もちろんさまざまな解釈があると思いますが。

本作もそういった要素を多分に含み、そこにキリスト教的抑圧と親による抑圧(その2つを極めて近いものと捉えている印象)、そして主人公の悪魔的・魔女的解放を描いている。

自身のアイデンティティと向き合うこと。そして、欲望に忠実に生きること。抑圧され続けた彼女からするとそれは清々しくもあるし、観客にとっては底知れぬ恐怖や不気味さをも感じさせるものでもある。

お酒、タバコ、麻薬、同性愛。キリスト教的にはあまりよろしくないことへと惹かれていく主人公テルマ。そして体の奥底にある他者に対する漠然とした優越感。キリスト教による抑圧が、社会的(旧来的)倫理による抑圧と極めて近く描かれ、そこから逸脱することへの拒絶心と高揚心で揺れ動くテルマの心。必死に抑えつけようとしつつも、抑えきれず溢れ出してくる本当の自分。そしてテルマの解放というパーソナルなことに留まらず、キリスト教的というか父権的というか、そういった旧来的な価値観を打ち砕き、「あるがままで生きて何が悪い!」という現代的価値観の台頭を描いたともとれる。

『キャリー』や『パトリック』等のサイキックホラーは、親とのあまりよろしくない関係性が強調され、超能力は親への反発的な要素をもつものとして描かれているように思います。本作でもそういった親への反発というサイキックホラーの定番を受け継ぎつつも、どちらかというと幼稚な性質を持つそれが、あたかも成長のように描かれるのが面白いです。

俯瞰だったり、カメラを引いて風景・人物を捉える映像が多く、静かで暗めな雰囲気と相まって終始不穏な雰囲気が漂ってるのがとっても良い感じ♫こういうところが北欧っぽいですね。キリスト教は全然わからないけど、カラスと蛇っていうのは、それに反するものの象徴と捉えて良いのかな。そいつらの登場がテルマの変容的なところで出てくるから、多分そういうことなんでしょうね。宗教色強めだし、よくわからんとこも多いけど、最後までずっと惹きつけられる傑作でした♫
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