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少女ファニーと運命の旅のminorufukuのネタバレレビュー・内容・結末

少女ファニーと運命の旅(2016年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

ナチス ドイツ統治下のフランスが舞台。ユダヤ人の少女ファニーは、母親と離れ、2人の妹とともにユダヤ人の支援者が運営する児童施設に身を寄せる。しかし、密告によりナチスに所在を知られたことで、子供たちは別の施設に移ることになるが、程なくしてその施設からも追われることになる。
ファニーたちは列車でスイスへの脱出を図るが、混乱の中、保護者ともはぐれ、子どもたちだけで逃亡することになるのだが…という話。
実在したユダヤ人の手記をもとにした作品。

とても良い作品だった。展開が速くて、開始20分くらいで、もう子どもだけの逃避行となるのは驚いた。

あらすじを読んだ時、主人公ファニーは、もっと大人びた人物像を想像していたのだが、実際観てみると、驚くほどあどけなくて小柄な少女で、どちらかというと大人しそうで全然リーダー向きには見えないタイプだった。しかもファニーは最年長というわけでもなく、仲間の中には男の子も混ざっているのだから、まとめるのはとても大変そうだった。ただ、下の子どもたちは更に幼いため、もう彼女が先導するほかなく、命がけの旅を続ける内に、責任感と勇気が芽生えていく過程が感動的だった。旅を始めた当初はけして仲の良いメンバーではなく、特に副リーダー的な少年とファニーは割と険悪だったのに、次第にお互いを気遣う関係となる流れが素晴らしかった。
戦争の狂気も生々しく描かれており、子ども相手に本気で尋問し、銃を向けるドイツ兵には恐怖を感じた。それだけに上映時間のほとんどは緊迫感に包まれていて、時折、子どもらしくはしゃぐ様子が見られてその時だけ安心する。小さい子どもが、さらに小さい年少の仲間の世話を自然に行うシーンが多く、何気ないけれど人間の尊さを感じた。

終盤の国境を越えるシーンはとてもハラハラさせられた。安全地帯に全員が飛び込んだ時は心底ホッとした。最後に身を呈して仲間を救いに行ったファニーの成長と、全てが終わったあとの心からの笑顔が印象的だった。

子役がみんな愛らしい上に、演技が上手すぎる。セリフも多いし、子役だけのシーンが大部分を占めているのにこのクオリティは凄まじい。ほんと掘り出し物の映画だった。
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