こうん

女は二度決断するのこうんのレビュー・感想・評価

女は二度決断する(2017年製作の映画)
4.3
あらすじが似ているのでてっきり「女神は二度微笑む」のリメイクかと思って観に行ったら邦題を被せてきただけでした。(どちらも川島雄三の「女は二度生まれる」由来でしょうけど)
という個人的な入口はよいとして、ドイツをはじめとしたヨーロッパの移民問題と排他主義的な暴力装置の因果を描いたハードなドラマでしたね。物語的な様相を変えていく三部構成でありながらも、ダイアン・クルーガーさん演じるカティヤさんの悲壮な感情劇場に引きずり込まれる2時間!生粋のドイツ人でありながら異国の人を愛したカティヤさんの感情のうねりに巻き込むことで憎悪とテロリズムの真っただ中を追体験させるかのような語りに持ってかれましたね。9・11の時に、テロは単に破壊が目的ではなくそれを見た人々の心に憎悪を埋め込むことだ…なんてことを知りましたが、本作はまさに憎悪が憎悪を生む様を描いており、そこに生まれる葛藤が身を引き裂かれるような思いで、権力も法も役に立たないと知った時の絶望と、その覚悟が…その覚悟に思いをはせて僕たちは映画館を出るわけですけど、そこにまた裏表(ミクロで見れば負の連鎖の断絶でありながらマクロで見ればテロそのものである)に気付いて、いたたまれない気持ちになるのです。
何て書いて締めればよいのかわからないくらい重い映画でしたけど、カティヤのお母さんのジャンヌ・モロー感はすごかったですね。
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