"硬い壁で囲った部屋の外には温もりと切なさに満ちた世界が広がっていた"
マイケル・ジャクソンのものまねパフォーマンスで生計を立てている青年が、マリリン・モンローとして生きる美女と出会った事をきっかけに、スコットランドの古城での不思議な共同生活が始まる…
画面の色味とスケール感、さらにそこに個性豊かなキャラクター、叙情的でユーモラスな台詞も加わり、非常に不思議な世界観を持った作品でした。
特にスカイダイビングをするシスターのスケール感抜群の画はとても印象に残りました。
共同生活をすることになる古城にはチャールズ・チャップリン、マドンナ、ジェームズ・ディーン、エリザベス女王、ヨハネパウロ2世…etc.
と、様々な人物になりきる人達が出てくる上に、レオス・カラックスが出てくるは、さらにヴェルナー・ヘルツォークまで出てきて画面内が完全にお祭り騒ぎ!笑
→ ただ、物語は非常にセンシティブな内容です。
モノマネ芸を生業としているプロの方ならば。外見が似ていなくても芸が伴っていれば笑えるのですが、本作の登場人物たちはその逆。
他人になりきる事でアイデンティティを獲得しているはずの人々のモノマネのクオリティがまぁー低い。
それがまるで、非常に繊細な中身を守るために硬い殻を身に纏っているようで、儚く切ない。(ただ、ドニ・ラヴァンに関してはチャップリンでもバスター・キートンでもなく、ヒトラーにしか見えませんでしたが…笑)
硬い殻に閉じこもったままの自分受け入れてくれるコミュニティーと言う名の共同幻想は心の安寧を与えてくれると共に、集団の中での"個"を消失させていくような危うさを持っており、終盤でのある出来事をきっかけに物語は終息へと向かっていきます。
そして、ラストで今まで明確な意味を感じることできなかったシスター達のお話が本筋とクロスオーバーしながら収束していく感じがとっても良かったです。
非常に好き嫌いが分かれる作品だと思うので人にオススメするには難しいところがありますが、個人的には十分に満足出来る作品でした。