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犬猿のminorufukuのネタバレレビュー・内容・結末

犬猿(2017年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

印刷会社の営業として真面目に働く主人公のもとに、強盗罪で服役していた兄が出所して戻って来る。凶暴で問題行動ばかり起こす兄を嫌悪しつつも、主人公は恐くて逆らうことができない。
そんな主人公の取引先の小さな印刷所には、勤勉で仕事もできる女社長がいる。彼女は責任感も強く周囲の信頼も厚いが、太っている見た目にコンプレックスを抱いていた。一方、女社長の下で働く彼女の妹は不真面目で頭は良くないが、可愛らしい見た目から男にチヤホヤされていた。
2組の兄弟、姉妹はお互いを見下しつつ一緒に暮らしていたが、兄の商売の成功と、弟と妹が付き合い始めたことをきっかけに、それぞれの微妙な関係に変化が訪れるのだが…という話。

気づいたら、僕が同監督のフィルマークス登録作の半分を観ている吉田恵輔監督の映画。
前作の「ヒメアノール」や「さんかく」「麦子さんと」など、分かっていてもどうする事もできない人間の性や狂気を描くのに長けている監督さんだと思う。

同性の、特にあまり仲の良くない兄弟姉妹がいる人が観ると、色々と心にグッと来るものがある作品。僕もその1人で、しかも兄貴が昔ヤンチャだった(^^)
期待以上に愉しめた。

兄弟というものは一番近くて古くて長い付き合いの比較対象であり、似ていないようで近い部分も多く、うっとおしくて同族嫌悪のような感情抱いてしまうのだが、それでもどうしても気になってしまう存在。そんな愛憎入り混じる感情を、独特の間のある演出と頓狂な逸話を交えて見事に描いていた。
2組の主人公たちの、堅実で社会的には成功している方の人物が、暗い感情を露わにして、最後には物理的なケンカを仕掛けてしまう展開が意外で面白かった。また、兄弟を疎んでいるはずなのに、他人に兄弟の欠点を指摘されると思わず反論してしまう複雑な心理には「分かるわ〜」と納得してしまった。
終盤は、なんだかんだ言っても、血の繋がりの絆の強さは尊いことを感じさせてくれて予想外に泣けてしまった。兄が幼少期の弟に誓ったことや、妹が姉に薦められたことを大人になって自然に守っているというエピソードも何だかしみじみとしてしまった。
弟役の窪田正孝のヘタレ演技や新井浩文のバイオレンスな芝居はさすがだった。女性陣の演技もなかなか良く、陰湿な姉妹関係を大熱演していた。
観終わって、自分も兄が死んたりしたらやはり泣くのだろうなあと思った。

この映画、冒頭がかなりトリッキーなのですごいビックリした。本編始まってると気づかずに、DVDのスキップボタン押したのは僕だけではないはず(^^)
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