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パンとバスと2度目のハツコイのminorufukuのネタバレレビュー・内容・結末

3.7

このレビューはネタバレを含みます

パン屋店員のヒロインは、2年付き合った彼氏のプロポーズを断り、そのまま別れてしまう。そんな折、ヒロインは中学時代の初恋相手と偶然パン屋で再会する。彼は、バツイチ子持ちで、離婚した元妻と寄りを戻そうと考えているようだった。相談事などの理由で2人は頻繁に会うようなり、ヒロインは次第に彼に惹かれていくのだが…という話。
以前鑑賞した「知らない、ふたり」では、複雑な構成と人間関係のラブストーリーを描いていた今泉力哉監督の作品。

とても風変わりだか心地よい恋愛映画。
ヒロインは温和で周囲の人物から愛されている様子が伺えるのに、心のどこかで孤独を欲しているところがあり、人生観についても独特な考え方を持っている。それは普通の人間が最早気にも留めなくなったアイデンティティだったり、好きになる気持ちについての本質的な疑問だったりして、非常に興味深かくて共感させられるものだった。
物語はヒロインの緩やかな日常を淡々と追いながら、同級生たちや彼女の妹らとの関わり合いを描いている。登場人物たちの関係性や何気ない対話がスマートで楽しい。ドロ沼な展開なども無いのでリラックスして観ることができる。実際あり得ないシチュエーションを自然に、しかもオシャレに見せているのも高評価。
この監督の旧作の「知らない、ふたり」では靴修理屋の描写が丁寧だった記憶があるが、本作でもヒロインの勤め先のパン屋業務の流れを細かく描いていた。
ヒロインの日課が、仕事帰りにバス停留所のバス洗車を眺める事というとてもユニークな趣味。のちに再会した初恋相手がそこのバス運転手だったこともあり、車内からバス洗車を見たいとお願いするのだか、その洗車シーンが不思議とロマンがあった。
あと、ヒロインの妹が美大予備校生で、作中で絵を描くことへの葛藤を抱えていた時期だったのだが、彼女が描いた絵をヒロインの家に泊まりに来ていた初恋相手が、妹が描いたと知らずに妹の前で自然と褒めるやりとりが微笑ましかった。このようにメインの主役2人とは別の人物の人生の岐路についても触れている点も良かった。
主演の深川麻衣は元乃木坂46とのことで、アイドル時代は全然知らなかったのだが、本作では柔らかい物腰だが芯の強いヒロインを好演していた。細かい表情の変化の見せ方が上手い。
結末もベタベタした恋愛で終わらないところが好みだった。
ヒロインがコインランドリーで使用していた洗濯機が、以前僕が通ってたコインランドリーの機種と同じだった。ヒロインは300円入れていたので温水洗いなのね。
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