backpacker

デッド11 -復活ナチゾンビ軍団-のbackpackerのレビュー・感想・評価

3.0
残念極まる"クソ邦題"映画。
Filmarksにあらすじがないので、以下に記載。
ーーー【あらすじ】ーーー
1918年11月、第一次世界大戦末期。
西部戦線から18キロ後方、アルゴンヌの森に、巨大な地下壕をドイツ軍が建造していたことが判明。
この第11塹壕には、"予言者ライナー"と呼ばれるドイツ軍士官がおり、化学・生物兵器の研究施設とされていることが推察された。
英軍将校2名は、戦地奪回を果たした米軍兵士3名と、12日間地下に閉じ込められていたカナダ人工兵を率い、第11塹壕の調査に向かう。
そこで彼らが目にしたのは、世にもおぞましい実験の産物であった……。
ーーーーーーーーーーーー

まず第一に、本作はよくある"クソ邦題"物です。
①第一次大戦の塹壕が舞台のため、ナチはまだ結党すらされておらず、関係ない。
②サナダムシ系の寄生虫により脳を食い荒らされ、思考不能の生きる屍となった兵士(感染者)が出てくるが、別に死んでおらず、ゾンビではない。
→そのため、銃で撃っても、首を絞めても、アッサリ死ぬ。
③ 上述のとおり、ナチは関係なく、ゾンビはおらず、なにも復活しようがない。また、少数精鋭の英米加部隊と、小隊規模のドイツ軍、ポツポツ現れる感染者と、全く軍団描写がない。
④原題は『Trench 11』。ドイツ軍の第11塹壕が舞台ということを端的に表す原題。いかにもゾンビ物という『デッド11 復活ナチゾンビ軍団』という邦題は、完璧な的外れ。

とこのように、典型的な"クソ邦題"映画なわけです。

さて、そんな残念邦題な本作ですが、中身はわりかし良くできたちょいグロホラー映画でした。

まず、キャストがちゃんと英語、フランス語、ドイツ語を使い分けてる点が素晴らしい。
(私はイギリス英語やアメリカ英語、さらには地方の方言については全くの無知のため、そこまでは判別できませんが……。)
全編英語でソ連兵やドイツ兵が喋るだけで、萎え萎えになってしまいますので、吹替で見るのが一番ですが、本作はこの選択肢がありませんでしたが、嬉しい誤算となりました。


次に、いざこざの絶えない潜入任務のお約束をしっかりなぞっていることです。
出自、主義主張、行動方針、全てが纏まらないメンバー達。それは敵も味方も変わらず、いつしか誰もがバラバラに行動するハメに。
そんな中捕虜となった主人公(主人公はカナダ人工作兵・バートンです)が、利害関係の一致したドイツ軍人ミューラー大尉と行動を共にし、リスペクトを育む。

この手のジャンル映画の十八番ですね。
敵対心を持ったまま、互いを尊重し合い、まるで友情とも言えるものを展開する。
戦争ジャンルでたまに見かけますが、こういうコテコテなのがたまりません。


最後に、コンパクトながら数多のジャンルをミックスした物語を、しっかりと畳んでくれたことです。
戦争アクション、潜入ミッション、密室ホラー、モンスター(ゾンビ)パニック、脱出サスペンス……。他にも、爆弾解除や人体解剖、生物兵器の生理的嫌悪感を与えるビジュアル等、多様な要素が渾然一体となっていますが、要素の上澄みを上手く掬い取り、良い所のエッセンスだけ集めて、ちゃんと物語に終止符を打ってくれました。

逆に言えば、どの要素も薄っぺらく、物足りない、中途半端なものとも言えますが、メインとなる戦争アクションが骨子となり、綺麗にまとめていたと思います。


クソ邦題のイメージに引っ張られると、内容が全く異なるため、ガッカリな作品と捉えられてしまうと思います。
しかし、邦題を忘れて見てみると「意外と良作」でしたので、皆さんがご鑑賞される際は、是非とも邦題を忘れていただければと思います。

なお、ポスタービジュアルのど真ん中に描かれるガスマスクから寄生虫が湧き出る兵士や、下半分に描かれる市街戦?は、一切登場しませんので、ご承知おきください。
backpacker

backpacker