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エセルとアーネスト ふたりの物語のslvのレビュー・感想・評価

4.2
『風が吹くとき』『スノーマン』などの名作で知られる英国の絵本作家、レイモンド・ブリッグズが自身の両親の人生を描いた物語。

これは世界の片隅の、どこにでもあるような家族の、ありふれた人生のストーリーだ。
だからこそ良かった。とても滲みた…。

きっと誰もが、自分や、自分の親の姿に重ねられる部分があると思う。

時代は変われど、国が違えども。
親の想い、子の想いって、万国共通だし、いつの時代も普遍なんだなぁとしみじみ感じられるシーンやエピソードがいっぱいで、微笑ましいし、懐かしくもなった。

エセルとアーネスト、この仲睦まじい夫婦の姿と些細な日常が、本当に心から愛しく感じられた。

そして、それぞれに支持する政党が違うこの夫婦のリアルな会話が、当時の社会情勢への風刺として効いているところも、凄く面白い。

時代が変わっていき、生活状況が変化していく様も再現度が高く、本当にリアルだ。
戦争が影を落とす不穏な時代を乗り越えて、経済の成長や産業の発達が著しい、便利な世の中へ。
その中で失われていくもの、変わらないもの。

地道に働き堅実に生き、息子も大人になり、退職を迎え、そして…。

終盤は、年老いていく親を見つめる息子の気持ちや、エセルが居なくなってからのアーネストの姿があまりに切なくて胸が詰まった。

そして私はこの仲睦まじかった夫婦の姿に、私の亡き両親を重ねてしまって、泣けてきた。。
エンディングに流れるポール・マッカートニーの曲もひたすらに胸に滲みて、いつまでも涙が零れ続けました。。
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