minorufuku

ヘレディタリー/継承のminorufukuのネタバレレビュー・内容・結末

ヘレディタリー/継承(2018年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

グラハム一家は祖母、夫妻、高校生の長男、13歳の長女の5人家族。
ある日、祖母が病気でなくなる。ミニチュア模型作家のヒロインは変人で隠し事の多い母とはそりが合わなかったため、あまり悲しみを覚えなかったが、おばあちゃん子のヒロインの娘は奇行を繰り返すなどやや不安定になっていた。ある日、仕事が立て込んだヒロインは長男が参加するパーティに長女を連れて行くよう頼む。しかしパーティ中に、長女が食物アレルギーの発作を起こしたため、長男は彼女を車に乗せて急いで連れ帰るが、その途中で事故に合い長女は死亡。長女の死をきっかけに一家は険悪な状態に陥る。ヒロインは、心の平穏を求めて参加していたグループカウンセリングで知り合った女性に降霊術を勧められ、娘との交信に成功するのだが、やがて一家の周囲では怪現象が発生して…という話。
予告編で知ってからすごい観たかった作品。公開初日に鑑賞。

押しつぶされるような不穏な空気が全編に漂っている作品。ひとことで言うとオカルトホラーなのだが、分かりやすい派手なホラー表現に頼らずに、時間をかけてゆっくりと物語の中の恐怖に観客を引きずりこむような構成で、訳のわからない怪異に抗うこともできないまま一家が少しずつ浸食されて行く様は心臓に悪かった。孫娘の死亡シーンは怖すぎ。映画としても不気味さは際立つが撮影手法に様々な工夫が凝らされていて、映像に芸術性すら感じた。ヒロインがミニチュア模型製作を生業にしていることもあり、一家が住む屋敷のデザインがかなり独特で、薄暗い狭い通路からのぞく部屋の中のカットなどが強烈な印象を心に残す。あと、ずーっと不安を駆り立てるような重苦しいBGMが流れていて押しつぶされそうな気持ちになった。
主演のトニ コレットの病んだ演技が圧巻。息子に怒りをぶちまける夕食の場面や、夫にカルト教団の説明をするうつ患者のような取り乱した演技は得体の知れない恐怖に怯える者の姿を見事に表現していた。
終盤のショッキングなシーンの連続からの事情説明に入るまで、物語の全貌がなかなか見えないのは賛否両論ありそうな作品だが、僕は楽しかった。最後のアクションだけ異常にスピードが上がるので通常の倍速異常に感じる。ラストだけ牧歌的なBGMに変わるのに終わり方は絶望しかないのも良かった。エンドロールの人名の出し方がスタイリッシュ。
登場人物では男性陣が可哀想。あんな変人な女性陣に囲まれて、特に旦那さんの末路には衝撃を受けた。観ている間は見逃してたのか旦那さんの職業がよく分からず、奥さんのマネージャー的役割なのかと思っていたのだが、調べたらセラピストだった。
minorufuku

minorufuku