140字プロレス鶴見辰吾ジラ

ウトヤ島、7月22日の140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

ウトヤ島、7月22日(2018年製作の映画)
3.6
【恐怖の日】

ノルウェーの戦後最悪と言われた連続テロ事件、ウトヤ島の無差別銃撃事件を生存者の証言を元に作り上げられたサスペンススリラー。フィクションの呈であるが、事件発生から72分ワンカット、さらにヒロインに寄り添う姿勢でカメラを配置した疑似体験型のスリラー映画となっている。

本作は、ホラー映画の様相も呈していて、ひたすらの逃走と物陰に隠れることで、当の銃撃犯の姿を確認することが出来ず、見えない不条理に追い回されながら、そしてはぐれた妹も探さなくてはと、鑑賞者の逃げたい欲望と主体のキャラ人格が妹の捜索を優先したり、パニックに陥り我を忘れるシーンに、不条理の“見えなさ“にとにかくイライラしてストレスがたまる。作成者の意図は届いているであろう。

本作の衝撃は、実は証言の集合体であり、そして何より凄惨さはほんの一瞬捉えることのできる犯人の姿とそれを目にしていた多くの死者たちの無念でもある。そしてその犯人を生み出した政治や社会情勢、警察の初期動作の遅れなど、現在公開中の「ジョーカー」にも当てはまる、ピースが不幸にも埋まってしまったことや、逆に止めることのできる危機だったのではないか?という無念の思いがブラックアウトとした画面と説明文、そして本作を経てこの惨劇を知った者たちに検索された事実に付け加えられる。