平野レミゼラブル

ブラック・クランズマンの平野レミゼラブルのネタバレレビュー・内容・結末

ブラック・クランズマン(2018年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

ブラック・クランズマンってブラクラマンって略すとネットでスッゲェーよく釣られる人みたいだよね 。
そんなどーでもいいことは置いといて、とにかくパワーに溢れる映画だった。

スパイク・リー作品自体は初見なんだけれども、差別を描くにあたって結構冷めた目線と直情的な感覚を併せ持った人なんだなーって印象を受けた。
直情部分はラストに絡んでくるので後述するとして、まずは冷めた目線部分。
まず黒人集会とKKK団の演説の描き方が特にそうなんだけれども、主義主張自体は「差別への反攻」と「差別主義」で雲泥の差があれど、どちらも発言が攻撃的で過激である点では完全に一致している。
本来ならば『正しい』主張であるはずの黒人集会で、聴衆たちが暗闇に溶け込んでいって、口々に「暴力衝動」とも言える警句を叫び続ける存在へと変わっていく描写は居心地の悪さを感じた。
また、やはり『正義側』で主人公の黒人警官ロンは「警官(ピッグ)」という呼び方を窘める程度に理性的なのだが、黒人集会の攻撃的演説は「ただの言葉のあや」と報告したのに対して、KKK団のそれは「奴らは本気でやる」と報告してしまう。
同僚の白人警官は両方とも「言葉のあや」で本気じゃないって報告してるわけで、ロンも決して全てにおいてフェアではないと示すバランス感覚の良さは凄い。

物語としても潜入先のKKK団に、普通の人もいれば馬鹿もいるし狂人もいるという描き方がフェアで、サスペンスとしての側面も保っている。
普通の人には気に入られて、馬鹿は情報収集に利用して、何をやらかすかわからない狂人に睨まれるという潜入捜査故の緊迫感は純粋に楽しめた。
オチとしても同僚で憎まれ役のファッキン差別警官は仲間たちと一緒にハメて制裁を受けさせるし、KKK団の首領へのネタばらしもザマミロ&スカッと爽やかな気分になれるカタルシスを持つ。娯楽性の塩梅も絶妙。



まあ…問題は色々賛否分かれそうなラストなんだけれども自分は完全に『否』派。

いや多分わざとだとは思うんですよ。あれだけ主人公のスタンスには絶妙なバランス感覚保たせてたんだから。
なのに最後の最後に突然感情爆発させたのは、おそらくKKK団が応援上映してたプロパガンダ映画の逆張りなんじゃないかなァ。
現実の『暴力』を映して虚構から『暴力』に対する怒りを表明しているわけだし。プロパガンダを逆利用してやったというか。
ただ個人的には明らかに「やりすぎ」の領域で冷めてしまった。
映像がインタビューを受ける現在のデュークまでだったらまた感覚も違ったかもしらんけど、実際に起きた事件まで映されると作品見た後の余韻すら消し飛んでしまう。
『虚構』の部分だけで勝負してほしかったなァ……