Jaya

ドッグマンのJayaのネタバレレビュー・内容・結末

ドッグマン(2018年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

片田舎の小心者トリマーのマルチェロが乱暴者で厄介者のシモーネに良いようにされて巻き込まれていくお話。一体どこの町なのだろう?

マルチェロの演技が余りにも素晴らしいです。動物を相手にする気弱さ、粗暴な友人に逆らえない弱さ、そこに通底する思慮の浅さ、全てが入り混じった存在を圧倒的な演技力で体現していました。

シモーネも素晴らしかったです。純然たる暴力性を剥き出しにした、文字通り狂犬のような男を見事に演じていました。

貧弱さや気弱さに付き纏う善良さや誠実さという人物像に対して、多くの場合にその奥にあるものは意志薄弱さや優柔不断さ、打算、そして孤独と自己嫌悪であると、現実を突き付けるような展開。

マルチェロの境遇に同情こそすれ、その行動に共感できる点は殆どなく、むしろシモーネのキチガイじみた悪の方がまだ理解しやすいという。

と言ってマルチェロを愚鈍な愚者と切り捨てる気持ちには到底なれないのは、これが人間の本質的な弱さに繋がるものだからだと思いました。

犬に囲まれたトリマーという設定は余りにも絶妙でした。マルチェロもシモーネも、お互いに飼い慣らせない存在であったという皮肉。獲物を仕留めた犬のように、シモーネの死骸を見せつける幻影をみるマルチェロ。ラストシーンで寄り添う犬も美しかったです。

人間関係の要素を抽出し凝縮し、見事な象徴化にすば抜けた演技と演出で、人間の弱さを描き出した傑作でした。
Jaya

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