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メイヘム 殺人晩餐会のhorahukiのレビュー・感想・評価

メイヘム 殺人晩餐会(2017年製作の映画)
3.6
ブチギレ店主が大暴れ!
イライラマッハな主人公が、襲ってきた強盗もムカつく従業員も全員まとめて監禁しちゃう鬱憤爆発ホラー。

カリコレ2018公開作です。
これも評価低いけど、結構好きでした!
R18ですが、グロとかバイオレンスは控え目なので恐らくエロ方面ですね。かな〜り生々しいエロが見れます。嬉しいかどうかは別として…(^_^;)

あらすじ…
レストランオーナーの主人公。閉店間際なのに客が帰らない。シフトが終わりに近づき、シェフやスタッフたちは帰りの準備をし始めてるのにまた新たにやって来る客。数日後には雑誌の取材がやって来るからその準備もしなければいけない。シェフたちは自分の思うように動いてくれないし、妻からはわけのわからない電話。イライラが募ったところにトドメを刺すかのように強盗2人組がやってきて…。

そんな感じで、何もかも思い通りにいかない主人公のイライラが頂点に…。客はウザいし、妻も鬱陶しいし、スタッフは言うことを聞かないし、雑誌の批評家どもの対策もしっかり考えないといけない。思考回路がパンクしそうなほどの重荷がのしかかり、抱えきれなくなったそのイライラと怒りの矛先がたまたまやってきた強盗へと向けられる。そして一度爆発して溢れ出てきた感情は止まることを知らずに加速していく。

強盗という絶対悪。それは怒りの矛先を向けるにはもってこいな免罪符。だからこそ感情の爆発は大きくなる。この感情爆発までの流れが非常にリアルだし、なにもかもうまくいかなかった主人公が支配者となることでもたらされる高揚感は計り知れない。この高揚感と優越感が自暴自棄的なバイオレンスを加速させる。

店主はその場では最大の権力者であり支配者であるはずなのに、日常業務においては何一つ支配できないという現実。その鬱憤を晴らし「俺が店主だ!ここではお前らの好き勝手なんて許さん!」と言わんばかりに支配者の座に就く。

そんでその主人公と共鳴してコンビを組むのがウェイトレスの女性。劣等感を全身から漂わせるような冴えない女性をリアリティある演技で見せてくれた女優さんが素晴らしい。美や仕事、日常生活に至るまで劣等感まみれな彼女に火をつけるのが全てを手に入れているムカつく女性客。こちらも溜まりに溜まった鬱憤が混乱に乗じて爆発する。

刹那的に獲得した「支配」がもたらす退廃的な高揚感と、正常と異常で行き来する2人の微妙な感情の起伏。そして観客の理解を拒むかのようなクライマックス。この倒錯感溢れる雰囲気がとても好き。そんで、冒頭窓越しに彼らを覗くようなカメラから本作は始まるのですが、こういう異常状態を見世物的に観察する作品だという作品趣旨を提示するナイスな始まりとラストだったと思います。
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