前作『Twilight of the Ice Nymphs』で、口出ししまくるプロデューサーにウンザリしたマディンは映画製作から距離を置いてしまう。そんな中、2000年のトロント国際映画祭で上映されるカナダ人映画監督の短編集に参加することになったマディンは、同じ企画に参加したエゴヤンやクローネンバーグが与えられた4分を数カットで処理するとの噂を聴いたことで奮起し、長編映画でも遜色のないプロットで4分の中に数百カットをぶち込むことを思いつく。短い時間にカットを割りまくる、そう、ロシア・アヴァンギャルド映画。ということで、舞台は黎明期ソ連であり、葬儀屋のニコライと俳優のオシップという兄弟が科学者のアナを取り合うという話になっている。オシップが演じるはキリストの受難劇であり、どこか『イントレランス』を想起する設定。そして、モノクロに死のイメージを吸いつけるのが大好きなマディンは、今回も葬儀屋という役を用意し、ベルトコンベアで葬儀を単純化するという近代化批判までやってのける。極めつけは科学者のアナであり、登場シーンは望遠鏡と目のアイリスショットという完全に『月世界旅行』そのものである。そして、彼女は地球の"心臓"を発見し、それが心不全で停止しかけていることを知る。世界に残された一日を過ごそうと、兄弟はアナに迫るが、結局は金持ちに取られてしまう。そして、世界の心臓は止まり、世界は崩壊の一途を辿り、救世主と死の見届人の兄弟は為す術もないが、金持ちに諭されたアナは世界の心臓に飛び込んで彼女が新しい心臓となり、世界に映画を生み出すことで世界を崩壊から救い出した。