このレビューはネタバレを含みます
過保護の母親から自立し、一歩を踏み出そうとする脳性麻痺の障がい者・マユの成長物語。
母の過保護と価値観に囲われて、ひとりの人間としての尊厳を手にできていなかったマユ。漫画家への夢を叶えるために、リアルなsexを求めて歌舞伎町へと繰り出したところから冒険がはじまる。いままで見れなかった世界を知り、家出をし、父親の姿を求めて東京を離れ、タイにたどり着く。生まれたときの37秒の出来事が、その後の一生に大きな影響を及ぼしたことを知り、自分のルーツと向き合った上で、また母の元へと戻る彼女は、そして母親も、一回りもふた回りも成長した姿になっていた。
深いテーマを感じさせているにも関わらず、明快なモチーフで、主人公の葛藤と成長も巧みに描いている見事な映画でした。
障がいというハードルに立ち向かう話から発展し、自分の殻を打ち破って自分の人生を歩み出すという誰しもが経験するべく成長を描いている。だから、惹きつけられる。
冒頭から、マユの入浴シーンや性への興味、youtuberの漫画家やそのゴーストライターをしていることなど、モチーフが次から次へと畳み掛けられる。
障がい者のヌードや、sex事情、表舞台に出れない状況など、あまり目にしない、アンタッチャブルなシーンが描かれているが、すべてはいまの世に存在している問題点であり、この映画ではそれが母親の過剰な愛情や周囲への引け目の結果として描かれている。素晴らしいなと思うのは、そういったセットアップが、セリフだけで描かれるわけではないこと。わざと追いつかないように立ち止まったり、映像表現しているところが見事。
主人公・マユの周りに現れるキャストも見事。母役の神野三鈴の演技はもちろん、成人漫画の編集長を務める板谷由夏や、新しい世界を見せてくれる渡辺真起子や大東俊介などが見事に役柄に、はまっている。
