中国の辺境の学校と彼らの家庭に密着したドキュメンタリー。そうか、PFFでドキュメンタリーってパターンもあるのか。
撮影や編集にすごく秀でてる部分がある訳ではないが、あるがままを映し、中国語話者だから与えられる安心感のもと家庭に入って行って撮影したものは、中国の生活史の一部となる力が十二分にある。

• #PFF

日本映画大学学生の卒業制作ということだが、そんなこと忘れてしまうくらいドキュメンタリー映画として素晴らしかった。

中国・甘粛省の農村にある唯一の小学校にスポットを当て、そこに通う子どもたちの生活を追っていく。
父親は出稼ぎに出て、母親が家出をしてしまい、曽祖父母に育てられている子がいる。
同じく父親が出稼ぎ組、障害のある母親と折り合いが付かず、家を出たいと願っている子がいる。
母親が亡くなり、父が必死に家庭を守っている父子家庭の子がいる。

彼らの日常が、生活が、学校での様子が、ただ淡々と描かれる。
それだけなのに、観ていていろんな思いが湧いてくる。
そこに圧倒的な現実の重みがあるからだ。

ふらふらと落ち着かない子、何かを諦めてしまったような子。
彼らの行動の裏には、貧困という問題が大きく関わっている。
けれど、映画はそこに答えを求めようとはしていない。
ただありのままの生活を映す。
その徹底した姿勢には感動を覚えるほどだ。
これぞ、ドキュメンタリー映画の醍醐味だろう、と思う。

中国を舞台にしたというスケールの大きさ。
映画が孕むテーマ性の奥深さ。
決して感傷的にならない冷静な視線。
いかにもドキュメンタリーらしい、腰をじっくりと据えた映像。

どれをとってみても大学生の作品とは思えない。
仮に「日本映画学校」という映画専門の大学であったとしても、だ。
プロの撮ったドキュメンタリー映画でも、なかなかこのレベルには達しない。
それぐらい、素晴らしい出来だった。

急激な経済発展ばかりが注目される中国だが、農村では現在でも当たり前のようにこういう現実がある。
貧困に苦しむ人々はいまなお大勢いるのだろう。
そういう部分に気づかせてくれたのも大きかった。
そのうえで、生きることのたくましさもちゃんと感じさせてくれる。
問題を声高に叫ぶだけの映画では決してない。

いやあ、すごかったです。

都会から遠く離れた中国の農村部のドキュメンタリー。格差社会の実態を目の当たりにできます。子供たちの想い、かなってほしいですね。