
美知はまだ3歳。今日から働き始める母親は、子育てに協力的じゃない夫に苛立ちながら、美知の手を引いて家を出た。会社の保育所に美知をあずけるためだ。初日から遅れるわけにはいかない。急ぎ足で駅まで向かうと、電車から吐き出される通勤の人々は、小さい美知の目には大きく、恐ろしく、足がすくんでしまう。電車に乗ることが出来ずにいると、優しく声をかけてくれた年配の男性が、折り紙の亀を彼女にくれた。 「この亀さんみたいに首をすぼめて自分を守ればいいんだよ」 。美知は、首をすぼめ、母親と電車に乗り込んでいく。不寛容な通勤電車の中で、人の優しさに触れ、成長していく少女の記録。
タクシードライバーの間で “深夜、人気のない歩道に立ちずさむ女“の噂話がささやかれるなか、 今日も遠藤はひとりハンドルを握り閑散とした住宅街を流していた。 いつもと変わらぬ夜―。噂の歩道傍…
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>>続きを読む過去を抱えながらも「今」を⽣きる主⼈公・五⼗嵐芙美(いがらし・ふみ)にこれから訪れるだろう幸せや希望を爽やかに映し出した “⼤⼈のおとぎ話”