ヨーク

スノー・ロワイヤルのヨークのレビュー・感想・評価

スノー・ロワイヤル(2019年製作の映画)
3.9
予告編で一目惚れ映画。
監督の名前とか全く聞いたことなかったがいやこれは絶対面白いだろと思って観に行ったが実際面白かったですね。予告編での印象としては『ジョン・ウィック』みたいな限りなくシンプルな構造の映画かと思っていたけどストーリーは意外と凝った作りになっていてびっくり。まぁ基本『ジョン・ウィック』と同じ復讐劇なわけだが中盤辺りから復讐対象のギャングとは別の組織がストーリーに絡んできて立体的な構造の物語になるというのが良い意味で予想外で良かったですね。ありていに言えばもっとバカ映画だと思っていたが結構芯のあるストーリーで渋いというかしみじみとするような余韻のある映画なのでした。
とはいえ別に何かメッセージを世に訴えかける社会派映画なのかと言われればそんなことは全くなく悪者同士のバトルロワイヤルをゲラゲラ笑いながら観れる優良なブラックユーモア映画なのでした。いやだって笑うよ? 主役はもう人生に疲れ果てたみたいな面してるリーアム・ニーソンなんだけどそんな親父がいくら息子を殺されたからってお前、いくら何でも暴力に対して躊躇いがなさすぎるだろ。模範市民賞をもらうような人は表情一つ変えずに他人を殴ったり銃で撃ったりできないって! お前ほんとにカタギかよ! 北野映画から出張してきたんじゃないの!? というキラーマシーンぶりで何なんだこいつ…ブギーマンか何かかよ…という疑惑を持ってしまうほどです。もうそんなん面白いに決まってんじゃん。さらに上述したように二つのギャング集団がちょっとした行き違いから全面抗争へと突き進んでいってあれよあれよという間に死体の山が築かれていく。その辺の登場人物がハイテンポで死んでいく様は『仁義なき戦い』の中盤から後半にかけて例の音楽がひっきりなしに流れて、こんなん笑ってまうやろ…となる感覚に近いものがありましたね。しかも基本的に死ぬのは悪党ばかりだったからあんまり心も痛まないという親切仕様です。
この映画でも屈指に好きなくだりなのでネタバレしない程度に書きますがモーテルの20ドルチ〇ポマンの散り際とか最高ですよ。最高にバカ。20ドルチ〇ポマンもそうなのですがギャング役のボスとその部下たちが非常に個性的でよかったですね。ただの無個性な兵隊じゃなくてちゃんと一癖のある人間として描かれていてそういうところにどうしようもないバカな人間のおかしみみたいなのが滲んでいてすげぇ良かったと思います。
そういう人たちがぽんぽんとテンポよく死んでいく愉快な映画なんだけど最初に書いたように割と渋く、しみじみするようなところもあるんですよね。どうしようもないバカな悪人たちの生き様、死に様は滑稽でもあるが自分が失ってしまったものを取り戻そうとする切実さもあったように思う。主役のリーアムも両ギャングのボスも求めていたものは自分が失ってしまったものではないだろうか。そして一度失くしてしまったものはもう戻らないのだという身も蓋もない現実。いくらリーアムが復讐を成し遂げても息子が生き返るわけではないのだから。そういう部分を重いテーマとして扱うのではなくあくまで要所でのスパイスとして利かせているのがいい感じでしたね。
あとこの物語を土台から支えていたのは若いねーちゃんとじいちゃんの町の警官コンビじゃないかな。あの二人の視点があったおかげで今作で描かれた事件の輪郭はとても分かりやすくなっていたと思う。そういう部分も含めて結構良く出来た映画だよなと思います。
面白かった。
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