140字プロレス鶴見辰吾ジラ

スノー・ロワイヤルの140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

スノー・ロワイヤル(2019年製作の映画)
3.6
【ワイルドカード】

何や!?
「殺しの藁しべ長者」かいな!?

模範市民賞受賞者が殺人マシーンへ!世を賑わすジョーカー。彼もまたジョーカー。恐れを知らず、殺された息子の復讐のため除雪車に乗り込み、ライフルを装備し、また1人また1人とあの世に排除していく。麻薬組織、先住民、警察、事件のない街で繰り広げられる死の連鎖。

内なるMADを解放し、組織のボスにも恐れない彼もまたジョーカーなのだ。貧困でもなければ、病人でもない模範市民がゲームのコマの中で予測不能な動きをする。抜擢されたリーアム・ニーソンはホアキン・フェニックスのような基地の外の演技者ではないが、彼の繰り出す拳に迷いはない。次から次へと情報を集めては殺し、そして大自然へと投棄する。

先住民問題も含め、テイラー・シェリダンの「ウィンドリバー」に肌触りの近い雪山西部劇、そしてビシランテムービーなのだが、社会派なマインドは重荷と捨て去り、娯楽イズムなタランティーノ風味の味付けに調理されていて雪の降る中記憶に埋もれるリスクも何のその。

殺しが発動した後のオシャレイズムな死に様とオタクがやりそうな二つ名をゲーム画面のようにキルカウントを重ねるところはダサく、独特、そして自分よがりのユーモアに富んでいる。それでこそジョーカー的でワイルドカードと言えよう。

最後の殺しのロングショットの言葉にしづらい空気感も含めて、「やれやれ」と天を仰ぐも拍手するもおまえ次第だ!と言いたげな背景的な白さと風味的ノワールがカフェラテのように溶け合う。