140字プロレス鶴見辰吾ジラ

The Strange Thing About the Johnsons(原題)の140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

3.8
【低く見積もっても地獄】

「ヘレディタリー/継承」を世に送り出して閉まった“怪物“アリ・アスターの短編映画。どういう人生を歩めばこんな発想、着想で映画を作れるのか?何気ない少年のオナニーから始まる本作は、他愛もない父子の会話であろうはずが、手に持っていた写真の人物が明らかになって空気は一変する。アリ・アスターの描く物理的、精神的な暗部と引きの絵、そして覗き穴から見た恐怖。単なる家族の崩壊でなくそれに至る家庭と、少しばかり安心したバスルームへの侵入も、それを見て見ぬふりをした母親のTVのvolumeを上げていくシーンと背景の叫びで逃げられぬ地獄へ。映画という切り取った空間が始まる前から始まっていて、ほんの少しホラー的な演出があるも物語の異常性に胸が苦しい。「ヘレディタリー/継承」にもあったコメディテイストな映像は奇しくもコミカルに悲劇を同化させる。ラストの対決シーンもつくづく炎の配置箇所と起こりえる最低を映し出し悲劇は終焉する。30分弱でこの後味。「ミッドソマー」を見て、我々は生きて帰れるのか?