140字プロレス鶴見辰吾ジラ

無双の鉄拳の140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

無双の鉄拳(2018年製作の映画)
3.7
【その男、マ・ドンソク】

韓国のバイオレンスアクションらしいアクションでありながらコメディの手触りを忘れない茶目っ気、そして何よりホラーテイストまで煮込んで皿にぶちまけている。チャイムがなってからドアがこじ開けられるまでの間や空気感はホラー的文法。さらには壁の振動でマ・ドンソクが迫ってくるシーンは怪獣映画ですらある。マ・ドンソクに対しては壁やドア、ガラスで境界を隔てられてもそれを破壊するパワーがある。すなわち我々はマ・ドンソクを野生の感覚で兄貴と慕うのだ。展開はリーアム・ニーソンの「96時間」にコミカルな相棒を加えたジャッキー映画的な娯楽性があるが、「SAW」におけるサバイバルゲーム性にて一線を超えてしまうか否かのサスペンスもあり楽しい。ストーリーの進行はスロースタートだが、それまでにマ・ドンソクがタフガイキャラと同時に目元で憂いや不安、正直者だが愚かなダメ夫である瞬間を切り出させ、暴力人間モード(通称:殺る気スイッチ)に変貌する際の奥に確実に秘めた暴力性開花の快感に大いに意味を持たせている。敵の親玉も小者のようなヒステリックさやサイコじみた行動の中に、裏社会を生きて、人の心理につけ込めるビジネス的信念があり、ただの「怖い人」になっていないのが良い。

マ・ドンソクの優しさがゆえのお辞儀のシークエンスが暴力とともに反転するジーンは爆笑したし、割とガチな韓国流カーアクションまで堪能させつつ、決定的な間抜けがいる安心感も忘れていない。そして作品のマイナス部分的なローンの返済を完了させるエンドロールはとんでもなく笑みがこぼれる。

韓国映画界のシュワルツェネッガーでありスタローン的であるマ・ドンソクからやはり目が離せず今後とも劇場に足を運ぶことになるだろう。