バルバワ

屍人荘の殺人のバルバワのネタバレレビュー・内容・結末

屍人荘の殺人(2019年製作の映画)
1.4

このレビューはネタバレを含みます

With コロナa.k.a.クソ世界ということでしばらくは映画館はおあずけである。←ツラすぎて変なテンション

まぁ、そんな私を不憫に思った妻は好きなDVDやらBDを観ることや午後のロードショーを録画してハードディスクを圧迫することに寛容的。

私がレンタルショップで借りてきた映画も趣味が合えば一緒に観てくれるようになりました。

妻は主にミステリーが好きで特にコナン・ドイルや江戸川乱歩を敬愛しているので少しでもそういう要素がある映画なら興味を示します。

今作が登場人物の名前やあだ名に"ホームズ"や"明智"等、妻の琴線に触れるワードが出てきており映画館でかかっている時も鑑賞するか否かで迷っていました。

そんなわけでたまには夫婦でしっぽりと謎を解こうじゃあないかということで8月の3連休に今作をレンタルし妻と鑑賞致しました。因みに原作小説は未読です。



いやぁ…不誠実ッッ!

あらすじは大学のミステリー同好会のホームズとワトソン、そして謎の才女が難事件に挑む!…的な感じです。

【予告からして】
去年の12月ごろ映画館に足を運べば今作の予告が流れ、主題歌をすっかり覚えて日常生活で口ずさむくらい刷り込まれていました。

予告はネタバレ厳禁の驚愕の超展開てんこ盛り、曲者揃いの登場人物たちが織り成すコミカルな前代未聞のミステリーエンターテイメントであることを強調しているのですが………

この嘘つきッッ!

まぁ、敢えて言うのであれば今作のテイストと予告が違いすぎることに驚愕しました。

また曲者という文言が…とりあえず、その曲者達とされるキャラクターが予告ではどのように紹介されているか書き連ねますね。

わがまま御曹司
超絶チャラ男
先輩のパシリ
ホラー映画マニア
執事中の執事
関西のおっちゃん
クレーマーおばさん
ヒステリック女
場違い小娘
ゴマすり女
スマホ落としただけ女

…このネーミングセンスもさることながらこの半数近くが何の活躍もなく死ぬという抜け目のなさ。

あと"ヒステリック女"というニックネームをつけられたキャラクターは好きでもない男に抱きつかれたから悲鳴を上げただけで、基本的に物静かな女性なのです。その悲鳴を上げたシーンを切り取り、ヒステリックとするのは本っ当にナンセンスですね!(#`皿´)サイアクー!

あと"ホームズVSホームズ"どっこいったん?


【宝の持ち腐れコメディ】
脚本は大ヒットテレビシリーズ《TRICK》の蒔田光治さんということもあり配役から作品のタッチはコメディ寄りです。ただ、そのことを意識し過ぎているというか…ギャグ演出は《TRICK》に寄っているけど、作り手が同じにならないよう微妙にタイミングをはずしてきて結果妙に間が悪く中途半端になっている印象を受けました。
というかふせえりさんや池田鉄洋さんなど日本でも屈指の喜劇役者が出ているのにこの体たらくは明らかに演出の力不足ではないでしょうか。あと主人公で万年ワトソンこと葉山くんが幼少期につけられたアダ名の話を出すタイミングが遅い上にどうでもいい。


【手垢の付いたミステリー】
今作の肝であるミステリー要素にしてもまずは犯人は1番怪しい人物で因縁深い相手に対して敵意丸出しの熱視線。それを補おうと必死にミスリードをブチ込むんですけど前述した犯人の態度や犯行動機、手段からして惑わされようがありません。ただ推理シークエンスはかろうじて謎を解き明かすワクワクはあります、ただその面白さは何度も観たような場面で"前代未聞"とは感じませんでした。

【仏像掘って魂が込められていないゾンビ】
そして、個人的に1番腹立たしかったのはこの部分ですね。

今作はミステリー映画であるとともにゾンビ映画でもあります。そしてこのゾンビ騒動は抜本的に解決されません。

別にゾンビを出すことや発生原因が解明されなくても別に良いんです。まあ、解明する気がないくせにゾンビウイルスを人々に注射する描写があるのはなんか不細工に感じましたが。

ゾンビ映画には発生原因が描かれない作品もあります。それこそジョージ・A・ロメロ監督の『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』『ゾンビ』等もそういう作品です。

では、何が腹立たしいかというとゾンビに愛がないからです。

今作はゾンビに建物が囲まれたり、窓ガラスに大量のゾンビの手、愛する人がゾンビになってしまう展開等々ゾンビ映画のお決まりを踏襲してはいます。しかし、今作のゾンビはただただ物語の賑やかしでしかありません。

それを象徴するかのような存在がプロレスラーの永田祐志さんのゾンビで目先の笑いを取る以外の意味はなにもなかったです。因みに、一緒に観ていた妻は深読みし過ぎて「(永田ゾンビは)アリバイ作りとかに利用されているのでは!?」推理しようと息巻いていました。ヽ(´・∀・`)ノドンマ-イ

ジョージ・A・ロメロ監督作のようにゾンビを描きながら今の社会を風刺するでもなく『ワールドウォーZ』や『新感染 ファイナルエクスプレス』のようなフレッシュなゾンビ描写もなく『アイ アム ア ヒーロー』や『ショーン・オブ・ザ・デット』、『ゾンビランド』のようにゾンビの溢れた世界での人間ドラマやゾンビとの関係性をシリアスもしくはコミカルに描くつもりもない…ゾンビを客寄せピエロとしてでしか描かない今作はただただ退屈でした。
工夫したことと言えばゾンビを殺す時に残酷に見せないようにする"あの"手法ぐらいですが、これは作品のレイテイングを上げて集客数を下げないためだけに知恵を絞っただけだと思います。
そんな俗なことに知恵を絞るくらいならもう少しゾンビに何かメッセージ込めたり、面白い見せ方に知恵を絞ってくださいよ!
これだけで作り手がゾンビに対して愛がないということがよく分かりますね。

《とってつけたような結末》
あと結末が物語序盤で消息不明となった中村倫也演じるホームズこと明智がゾンビになって出てきてある人物に殺されるという展開なのですが、これが本当に蛇足というか…この結末を観て妻は明智が颯爽と現れて「ゾンビの謎を全部解決してきた!(`□´)⊃ビシッ」と大見栄を切ってくれたほうが良いと言っておりました。個人的には妻が提案した荒唐無稽な結末の方が作品のテイストに合っていると思いますし、そこまでふざけてくれた方が非常に好意が持てます。

《最後に》
予告は大げさ、コメディ要素は中途半端、ミステリー要素は凡庸、そしてゾンビ要素は愛がない、結末は蛇足…ロイヤルストレートフラッシュのような映画を久しぶりに観ました。

ミステリー好きな妻は犯行のトリックの凡庸さに愕然とし「私が書いたんか!」と憤慨してました。

あえて褒めるのであれば役者さんの頑張りとPerfumeの主題歌くらいですかね。

ミステリーやゾンビというジャンルに不誠実な映画なのですが、普段この2つのジャンルに馴染みのない方には観やすいのではないでしょうか。
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