ぎー

ラストナイト・イン・ソーホーのぎーのレビュー・感想・評価

3.5
【エドガー・ライト特集4作品目】
"驚愕のタイムリープ・サイコ・ホラー!"
エドガー・ライトどうした?って感じだった。
作風が変わり過ぎ。
これでエドガー・ライト徳洲も4作品目だけど、他3作品と圧倒的に作風が異なる。
エドガー・ライトといえば、笑いあり恐怖あり、の緊張と緩和が持ち味だけど、本作はその従来までの持ち味は全くない。
まず、ギャグ要素が全くない。
これまでの作品は全て上映時間に終始ギャグが散りばめられていたのに。
そして、驚くことに、恐怖も全くなかった。
ジャンルとしてはホラーに該当するのに、である。
エドガー・ライト作品はいつも、なんでもない場面切り替えでも全て、疾走音と必要以上に速いカメラの振りで緊張感を高めていたけど、本作はそういう演出も全くなかった。

一方でこれまでの作品に見られない新たな持ち味が出されている。
上質さとお洒落さ。
本作はファッションデザイナーの女の子が主人公ということで、そっちに振ったのかもしれない。
とにかく作品全体を包む雰囲気も、ファッションも、ロンドンの画も、色遣いもお洒落だった。
従来の持ち味の緊張と緩和が出されず、翻ってお洒落さと上質さが出された結果、安心して鑑賞を楽しむことができる、質の高い良い映画として仕上がっている。

もしかしたら男性より女性受けの良い映画かもしれない。
お洒落で上質だし、現在編と過去編それぞれの主人公、エロイーズとサンディはとにかく可愛い。
そして映画のストーリー自体も、そのエロイーズとサンディが困難に直面する内容となっていて、女性の方がより共感できるかもしれない。
エロイーズの周囲の服飾学校の女学生は、良い歳してイジメとかに励んでいて、本当にくだらなかった。
でも、確かにこういう子たちはいるし、そういった子たちとの付き合いに悩む子も多いのかも。
サンディはやっぱり芸能業界柄というところもあるのだろうが、サンディのような野心のある立場の弱い女性を食い物にする男に囲まれてて、奴らは人の風上にも置けない存在だなって改めて思った。
でも、レベル感は違うかもしれないけど、間違いなく現実世界にも一定数そんな奴らは存在する。
ラストでそんな困難に直面してきた2人が現実世界で交錯するストーリー構成も見事だし、共感と相互理解で幕を閉じる終わり方も後味が良かった。
ぎー

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