はちどりのminorufukuのネタバレレビュー・内容・結末

1994年の韓国が舞台。14歳のヒロインは小さな餅屋を営む両親、兄、姉ととも暮らしているが両親は忙しさから子どもたちと真摯に向き合う余裕がない。学校にも馴染めないヒロインは他校の友人とともに通う学習塾で独特な雰囲気をまとう女性教師と出会い惹かれていく......という話。
監督の少女期の体験がもとになっているらしい。

10代の少女の家庭環境や学校での共同生活、進路や恋愛に関する悩みや感情の揺らぎを繊細に映しだした作品。
複雑な人間関係の中ヒロインの前に次々と困難が現れる展開なのだが、それを大げさには表現せず、少女の視線を通して静かに描いている点が心地よい映画だった。
1990年代の時代設定で、キム・イルソン死去やサッカーのアメリカワールドカップなどの出来事も懐かしい。役者が歌唱する劇中歌も昨今のK-POPとは異なり素朴で親しみのある楽曲で穏やかな気持ちにさせられた。文字を書くシーンが多めなのだが、役者の左利き率が高い。
淡々と進む作品ではあるが、ヒロインの内面のアップダウンは激しい。全てが充実していて幸せな時間を過ごすパートと悩み苦しむ時間帯とギャップも大きくて、単純な人間ドラマにしていないところも高評価だった。暴力をふるい子どもたちに厳しく接する父親が、手術を受けることになった娘を心底心配する一面を見せる場面は印象的だった。最後にヒロイン表情の変化をひたすら追うラストシーンも良かった。

僕も辛い時や自分が嫌になった時は指先を見つめようと思った。