Taka

はちどりのTakaのレビュー・感想・評価

はちどり(2018年製作の映画)
4.3
1994年の韓国を舞台に思春期真っ只中の中学2年生、14歳の少女の主人公を通して繊細にじっくりと世界観を見せていく見事な一本。

韓国ならではな社会背景(受験戦争や長男重視の家族文化と男尊女卑社会、聖水(ソンス)大橋の崩落事故)と普遍的である思春期の悩み(孤独さや多感さからくる世界の窮屈さ)が見事に合致し、決して物語として大きな飛躍はないまでも、ジワリジワリと感じる切り取り方は素晴らしかった。

観ながら、韓国の社会背景の咀嚼はしきれなかったが、家庭環境だったり、思春期の孤独さはものすごく分かった。注目されたいし、自分自分だし、悪さしたいし、上手くいかないこの世の中に苦しくなる…あったあったと。そして、こうあるべきという固定観念が人々を締めつける。そんな138分の物語を通して、14歳の主人公・ウニは自分の生き方を見つけていく。

先ほど、物語に大きな飛躍はないと書いたが、この物語は突飛ではあった。さっき出てきた登場人物が急にいなくなったり、主人公の病気が意外と深刻だったり、前触れが全然ないのがすごい。こうした要素がクライマックスへと繋がるのだから上手いとしか言えない。下手な映画はそこで余計な前触れや説明を加えていただろう。しかも、こうした力量を長編映画初監督作でやったというのだからすごい。キム・ボラ監督の今後に期待したい。

ウニを繊細に演じてみせたパク・ジフも素晴らしかったし、キム・セビョク演じるヨンジの見事な後押しも良かった。1994年という時代を"今"描く意義は大きかった。1994年と2020年は時代の橋でしっかりと繋がり、この映画は自分に届いた。きっと、これから続く道はこの世界を新たな道へと導くだろう。そう思いながら、自分は劇場を去ったのだった。
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