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夏、至るころのminorufukuのネタバレレビュー・内容・結末

夏、至るころ(2020年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

福岡県田川市が舞台。高校三年生の主人公は幼い頃より親友とともに和太鼓を続けている。しかし、晴れ舞台の夏祭りを前にして、その親友から受験勉強に専念するため和太鼓を辞めると聞かされる。卒業後の進路について特に考えを巡らすことをしていなかった主人公は親友の変化に戸惑うのだが......いう話。女優の池田エライザが原案と監督を務めた作品。

和太鼓に打ち込む男子高校生たちが友情や進路に迷い揺れ動く姿を瑞々しく描いた良作。
物事を深く考えずに学業にも和太鼓にも自由な直感でのぞむ主人公と、基本を重視して将来のことにも頭をめぐらせている親友との対比が成されて物語が進む。それぞれ相手のことを羨ましく思っている設定が秀逸で、お互いへの嫉妬に似た感情が奔放な年上ヒロインとの交流を通し表面化する流れが上手かった。そんな彼らを両親や祖父母、教師らが見守っている様子も温かかった。
男の子が主人公だが、監督の私小説のような雰囲気のお話。俳優の初長編監督作は結構コケることが多い気がするが、本作は地味ながらも奇をてらわずにじっくり自分の撮りたいものを作っているように感じた。プールに落ちるシーンに暗転を数回挟みこむ演出が印象的だった。

池田エライザ本人は1シーンしかも後ろ姿のみの出演だったようだが、撮影現場を映したメイキング映像では誰よりも存在感があった。
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