死体安置所で働く男ステニオ。死体と話せるせいで、次から次へと他人が知るはずのない情報を得てしまう。結果として家族の命が狙われることに。。
見た人に"理不尽と因果応報の割合"を聞いてみたくなる、シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション2019作品。
シッチェスセレクトに(好みの)ハズレ無し、と刷り込まれているので、ジンクスに違わず楽しめた。
ステニオとだけ会話する死体たち。動くのは目と口のみで、身体や表情は死体のままというのが不気味で好い。
動き回る霊体(演者の通常演技)ではなく、あくまで死体との語り。
ギャングの抗争、裏切り、密告、etc. 知りたくもない話を聞かされる主人公は憐れ。
作品紹介文から、てっきりギャングらに狙われるのかと思いきや、脅威はあさっての方からやってくる。
ここで変にギャングを引っ張らない潔さも好い。
ラストに走り出す父。ぜんぜん上手くないのに格好良く見える不思議。ゾンビ映画にあるラストの夜明けみたいだ。
続くエンドクレジットの映像が、B級アクション映画によくある風でなんか安心。
シッチェス作品には、高尚さよりも勢いや強い個性を求めてしまうため、安っぽさや粗があると却ってホッとする。
とはいえ、今作は終始淡々としていて起伏は控えめ(私見)。
内容は、妻への愛憎とかギャングとの交渉とか、けっこうヘビーなスリラー展開なのだけど。なにやらまったりと心穏やかに鑑賞。この手のホラーではめずらしい110分ということもあり、(心に)ゆとりあるとき推奨。
※以下やや内容に触れ気味
登場人物らの自己中、傲慢、高飛車、矮小、若輩、etc.
恐らく大多数の人が"妻"に理不尽さを感じるのだと思う。私も話の筋として妻が厄介なのだとわかっているつもり。
ただ、許せないという感情の許容範囲は人それぞれ。自分以外の感情ってわかりようがない。
無念な死に方をした人がいたとしても、肩がぶつかっただけの人の怒りの方が上回っていても不思議ではないし。
恨みつらみに限らず、恋人同士の愛情、犬猿の仲、希望、執念、SAN値の削れ具合い。。
判断基準はどこまでも当人のみであり、比較検討は想像でしかない。
なのでいくら理不尽でも"妻の中"では正当な怒りなのだろうなと。
まったく盗っ人猛々しいというか。どこまでも我儘というか。ほんと濃いキャラクター(好き)だ。←これ
"親殺しに救済はない"
"死人の秘密をバラすと死ぬ"
ここらへん、宗教観も含めての設定みたいだけれど、宗教色の薄い人(日本とか)には効果がないのかな。
そもそも秘密という概念の範囲、利用と悪用の境界、それらのジャッジを下すのは誰かと考えると。。結局自身の心の中?
というか、死体と話せるステニオ。そんないい歳になるまで死者情報を利用したことがない方が驚きだ。
死者の声を元に問題解決するお話やドラマなどごまんとあるのだし。
強い信仰心が、救われるためではなく、呪われることに効果を発揮したってことなのかな。それ、本末転倒にも程がある。
鑑賞 2021.04.13 ひかりTV