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イントゥ・ザ・スカイ 気球で未来を変えたふたりのneroのレビュー・感想・評価

3.0
高所恐怖症のこの身には辛いシーンが多かった。雲海に気球を捉える画面は確かに美しいが、俯瞰のアングルではもうずっと膝がふるふるしていた。
科学者ジェームスと飛行士アメリアが、それぞれが抱える苦悩を描写しつつ、互いの立場を尊重し協力して気球による初の成層圏飛行を達成するまでを描く。
それにしてもこのタイトルセンスは本当になんとかならんのか。

グレイシャーの気球観測は、高度記録更新もそうだが、大気の層構造研究の端緒として19世紀科学発展史的には結構重要なイベントだったようだが、その辺のニュアンスが弱かったのは残念かな。まあ、史実通りの男二人だったら、ストイックなバディ感は出せたかもしれんが当たらないだろうなあ。架空の飛行士アメリアを載せたことで、エンタメとしてのワクワク感は増幅しているけれど、ややフィクションぽくなりすぎたとも言える。
当初飛行士でアメリアというからアメリア・イアハートがモデル?と思ったが、調べるとソフィー・ブランシャールというフランスの気球飛行士だそうだ。飛行中に亡くなった夫の跡をついで気球乗りになったという経緯も本作のアメリアに重なる。

鳩のくだりなどもかなり脚色されているが、環境の苛烈さを描くのにはそれなりに効果的。乱気流やバルブ凍結や急降下など、冒険譚としての見せ場も多く、降下速度制御には、なるほどこういう方法があったかと感心したし、えらいハードランディングながら生還して心底ほっとした。映画としてのカタルシスはやはり重要だよね。

ただ、一本の映画としてはどうもフォーカスがぶれているように感じたのも事実だ。”アエロノート”という原題なら飛行士アメリアの”空への想い”がメインテーマだろう。なのに、ジェームス視点の”科学への使命感”を同時に描こうとしたため、どっちつかず感が残ってしまったのが惜しい。本来別の映画とするべきだったのではとも思う。
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