すがり

ハスラーズのすがりのネタバレレビュー・内容・結末

ハスラーズ(2019年製作の映画)
1.9

このレビューはネタバレを含みます

まず思ってたのと違ったこと、これが大きい。
オーシャンズ的なエンタメ性に振って出してくると勘違いをしてたね。
結構なシリアスというか実情を描くタイプで、ドキュメンタリー性の方に振っていた。
途中でインタビュー形式の映画だと判明して、映像は全て過去の振り返りによるものだったと分かるせいで気持ちにちょっとブレーキがかかってしまう。

なんて言うんだろうか。
こういう過去の振り返り系の映画ってあんまり得意じゃない。
映画に限らず自分が創作物を消費するとき、大きく求めているのは感情移入なのよね。
その人とかその世界とか、そういうものに浸りたい、追体験がしたい。
そのために創作を求めてる。
だから作中における過去の振り返りが軸だと分かると、物理的にも精神的にも第三者として映画を見ることになっちゃう。
そして振り返り系は他の物語と違って、後ろには大した山場がなかったりもする。
前半から助走を仕掛けて、段々と速度が上がって後半のある段階で一気に弾ける。
それが物語の基本構造のはずだけど、振り返りは別に弾けることもないのよね。物語自体はすでに終わってるんだから。
終わってなきゃ振り返れないんだから。
よっぽどのことがなきゃつまらないのよそれ。

しかもこの映画はストリッパーが男に仕掛ける犯罪の話。
感情移入先のない映画だからひとまず同じ自認のある仕掛けられる側の男に感情移入しようと試みる。
でも無理なのよ。
この男たちと自分じゃ何もかもが違いすぎる。
あんなにお金ばらまいたことも、今後ばらまくこともないだろうし。そもそもとしてストリップクラブに通いたいようなメンタルしてないし。

リーマンショックがどういうものだったのか、裏で何があったのか。そういうのは人並みには知識もありつつ、マネーショートを見たときにおさらいもしていたのでその惨状によって打撃を受けた部分に感情移入できなくはない。
でもやっぱりそこにもエンタメ性は入ってこなくて。
あくまでドキュメンタリーというのか、金融業界に喧嘩売ってあたしらは楽しく暮らすぜみたいな雰囲気は感じられなかった。
楽しく暮らすぜはやってたけど、これもなんと言うのか。感情移入が追いついてないからものすごく一方的な利益搾取に見えてて、こっちに快楽みたいなものは一切伝わってこない。

要はいじめ。
ラモーナの言動には常にそういう、いじめの主犯的な雰囲気がある。
これが元々ウォール街が、ひいては金融業界があたしらに相対してきた態度と扱いだよ。それがリーマンショック以後でちょっとだけ立ち位置が入れ替わっただけだ。
ってそう言われたらそうなのかもしれないし、そう考えるならドキュメンタリーとしてはたしかに少々深めの映画なのかもしれない。
でも映画見てるこっちにはずーっと妙な罪悪感があるんだわ。これは全然気持ち良くない。
主人公のデスティニーもそんなこと言う。
ずっと罪悪感があったって。
そういう意味では感情移入できてるのかもしれない。
これがもっと気持ち良かったらまた映画の感じ方も変わったのかなとは思う。

それでも明らかに人の良さそうな被害者もいたしさ。やっぱり感情移入できてたとはなかなか思えないんだわ。
女性同士の友情というのも映画見る程度で理解できるものじゃないだろうし、そもそもこうしてお金の繋がりで友情って言われてもいまいちピンとこない。
少なくともこの映画を見た限りでは、友情というよりも恋。繋がりというよりは依存。そんな印象を受ける。
セリフでも度々誰にも頼らない自立って言葉が登場してきて、強調もされてる。
見えてる人間関係に依存がチラつくように感じられるのも、演出の賜物なのかなと思えばまんまと術中にはまっているわけだ。
そう考えると結構すごい映画なんだけど、問題はやっぱり、それが創作物の消費として楽しいのか気持ち良いのかということ。

だからまあ、端的に言えば合わなかったんだろうなあと感じる。
インタビューが発覚するまでは、ここからどうのし上がって転落して、復活するのかって結構なわくわくもあったんだけどね。
その辺はちょっと残念に思いつつも、ジェニファー・ロペスはめちゃくちゃイケメンだし。
リリ・ラインハートははちゃめちゃに可愛いし。ほんと絵に描いたようなブロンド美人で衝撃もままある。
画面としては美男美女見てるだけでも大体楽しいからそこはね、良かったね。
すがり

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