平野レミゼラブル

ザ・バッド・ガイズの平野レミゼラブルのレビュー・感想・評価

ザ・バッド・ガイズ(2019年製作の映画)
3.7
【狂犬には狂犬をぶつけるんだよ!!!!】
全然知らずに観に行ったんですけど、この映画って元は韓国の人気ドラマ『バッドガイズ~悪い奴ら~』の劇場版で続編なんですね。タイトルで「THE MOVIE」の文字が浮かんで「あれっ!?」ってなりましたが案の定。
ただ、ドラマ版の登場人物らしき人達の半分は序盤で離脱して、新メンバーが入ってくる構成なんで、映画版から観て全然大丈夫です。お話の内容自体も、韓国で急増する凶悪犯罪者達の一掃のため、警察が収容中のエリート犯罪者達を特別捜査官に指名して鎮圧にあたるという荒唐無稽&単純明快さで飲み込みやすいです。

さらに主演があのマ・ドンソクということで更に飲みやすい!要はマブリーのアイドル映画でもあるわけです。
可愛らしいミシン手袋して洋裁に勤しみながらも、他の囚人から「兄貴!!」と呼び慕われていて、揉め事が起きたら鉄拳制裁で解決…と、マブリー演じる主人公ウンチョルの端的な自己紹介となる冒頭なんて、実家のような安心感ですよ。

「犯罪者には犯罪者をぶつけるんだよ!」理論によって、27年の懲役食らっているウンチョルの他、すい臓がんにより警官を引退したオ・グタク(この2名がドラマ版からの続投らしい)、犯人逮捕時に過失致死に問われてしまった元・若手エリート警官のコ・ユソン、自称コンサルタントの女詐欺師クァク・ノスンといった「悪い奴ら」が結成されます。
要は韓国版『スーサイド・スクワッド』というワケでして、どいつもこいつも一筋縄ではいかない。そんなクセのある奴らの掛け合いや、更なる悪党に対して容赦なく振るわれる暴力がシンプルに楽しいです。
ドラマ版からの付き合いであるウンチョル&グタクはともかく、他2人はイチから信頼関係を結んでいかないといけないところにもドラマがある。一応、彼らにも度を越えたクソ犯罪者に対しては、2度と犯罪が出来ぬよう背骨をへし折る私刑を行うくらいの社会正義(?)はありますが、基本的に求めるのは自らの現場復帰や減刑なため一枚岩ではないのです。
まあ、同じくマブリーのアイドル映画で、ヤクザと警察の呉越同舟だった『悪人伝』と比べれば仲良しクラブも良いところなんですけど。

そんなチームの協力プレイも見所の一つではあるとはいえ、話の大半はマブリー無双です。なんせ、扉は開くより先にぶち壊して入るし、投げつけられる植木鉢も一撃で粉砕して殴り抜け、そのパンチ一発で人体が凄い勢いで吹っ飛ばされる。
彼が出たらもう勝ち確って感じでして、その為マブリーを見張りに残したりの露骨なバランス調整も見受けられます。結構強い連続殺人鬼追ってるのにマブリー残すの、完全な采配ミスだもんな……
絶対に負ける筈がないという信頼感が強すぎて緊張感はないんだけど、その分出撃したら滅茶苦茶気持ちの良い大暴れをしてくれるので、マブリーが出張っただけでニコニコ笑顔になります。

アクションもマブリーのパンチだけではいずれ飽きが来ると判断したのか、終盤に「幽霊の足」と呼ばれる追加戦闘員を配置してくれたのも嬉しいところ。早すぎて足が見えない——故に「幽霊の足」とは良く言ったもので、見事な空中キック殺法で文字通り敵を蹴散らすサマが圧巻。
剛のマブリーに対して、速度の幽霊でバランスの取れたアクションシーンはシンプルに楽しいです。

また、アクション以外でもマブリーにはあざとい魅力が溢れており、女性に対して免疫がなくてツンデレしてたり、暴力禁止されてたのについつい暴力振るっちゃって誤魔化すサマなんかが可愛い。
あと、壮大な音楽流してキスまでします。流石、マブリーのアイドル映画だ。


ドラマの劇場版ともあって序盤から武装勢力による護送車襲撃に、逃げる4人のスーパー犯罪者、そして彼らを追う内に見えてくる国家規模の陰謀…と言ったように大風呂敷の広げっぷりも激しいです。
それでもテンポは良く、程良く暴力やギャグも交えるから楽しくはあるんだけど、話の幅広げ過ぎてところどころ話に置いていかれるのはご愛敬。というか、テンポ重視するあまり過程や布石をスッ飛ばして話が展開したり、単純に溜めが不足している部分もあるのは、正にドラマの劇場版って感じの手つきです。

そして、韓国映画における劇場版スケールってこういうことになるのか…そうか…っていう感じのラスボスも中々新鮮。割と1人だけ世界観が違うというか、むしろ『忍者と極道』の世界の悪党(ワル)だろ、お前って感じ。
装着する卑劣武器ナックルダスターも、やたら中二病的浪漫造形なのもイカす。


全体的に大味なドラマの劇場版って印象がどうしても拭えなくはあるんですが、それでも韓国映画らしい暴力アクションに全力で取り組んでいてキレキレなため、「そうそう、こういうのでいいんだよ、こういうので!」に落ち着く感じの作品ですかね。邦画で言うなら『HiGH & LOW』に近しい感じ。
そういえば、ハイローのLDHが韓国映画関係のベンチャーのTGCKと提携したってニュースもありましたが、これも一緒になってまた続編ないしスピンオフ作ってくれないですかね。本作のラスボスなんてハイローの九龍グループ感ありましたし、その方面に特化させたらより外連味に溢れて愉快なことになりそうなんだよなあ。
ともあれ、ますます勢いを見せる韓国バイオレンスアクションのこれからも楽しみです。

オススメ!