horahuki

ウィッチクラフト 黒魔術の追跡者のhorahukiのレビュー・感想・評価

3.4
誘拐された娘を取り戻せ!

警察も市長もみんなグル。そんな南米クオリティな地獄感溢れる人身売買組織に魔女が単身スーパーパワーを駆使して殴り込む!でも黒魔術には代償が…。痛みを伴いつつも、魔女は無事娘を取り戻すことができるのか…ってな感じのダークファンタジー。未体験ゾーン2020です。

アルゼンチンでの子どもや若い女性を狙った人身売買のニュースって時々見かけるように思うけれど、実情がマジでこんな感じなのかと思うと、今までに散々踏みにじられ蓄積されてきた人々の無念や憤りを魔女という非現実に託したい気持ちもわかりますわね。本作は、決して抗うことのできない辛い現実に対する非現実からの抵抗っていう怪談的なお話。

本作の魔女は近隣の住民たちからも疎まれている。貧しいために携帯を娘に買い与えることも出来ず、ひっそり細々と暮らしてるのだけど、誰も手を差し伸べるどころか突き放すかのような態度をとる。魔女なんて怪しい存在に対する距離感って、それくらいが普通だと思うのだけど、若い少女たちが次々と誘拐されることで、一般的な市民を代表するキャラクターが魔女に対して心を開き行動を共にするようになる。

魔女というのは、自国が抱える見過ごすことのできない問題に対して立ち向かうための団結をもたらす象徴なのでしょう。でも魔女の下に団結し現実を覆すというわかりやすい展開を本作は見せるわけではなく、人々は集うだけで結局行動には移らずに終幕となる。ここに魔女という非現実の存在を採用した意図を見出せるように思う。

覆すことのできない強固な現実を前にした逃避的感情の顕れとしての縋り付きたい非現実という意味合いだけではなく、人身売買が必要悪として許容される風潮があるとされるアルゼンチンにおいては、打倒に向けた団結そして目指すべき根絶こそが非現実だとするペシミスティックな考えをも魔女という存在が担っているように思える。本作の魔女は弱い。それこそが「魔女」という、問題根絶に向けた人々ないしは国そのものの距離感の顕れなのでしょう。知らんけど。

とりあえず、携帯が欲しすぎるあまりママを操って、スーパーパワーで「携帯欲しい」っていうメッセージを送りつける娘さんの本気度に笑った。操られてる時のママ、死にそうなくらい苦しんでたけど…😅携帯買ってくれない恨みで娘に殺されるんかと思った。
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