むぅ

BARに灯ともる頃のむぅのレビュー・感想・評価

BARに灯ともる頃(1989年製作の映画)
4.2
あぁ、モゾモゾした。

お互いを思いつつも、上手く距離感がつかめない父と子。その2人の久しぶりに過ごす1日の物語。

あぁ、分かる。
もう画面の中に入っていって、横でうんうん相槌を打ちたくなるほどに分かる、だった。

今でこそ、そんな冷たいことはしないが、出会ってきた全ての人の中で自分史上最高に天然と勝手に認定している母がキャピキャピと話していると、むず痒く感じる事がよくあった。
真顔で聞いていると「もうちょっと楽しそうに聞いて欲しい」という要求が来るのだが、 もうそもそも「凄く面白くてね!」とご自身でハードルを上げられる所まで上げてから話し出すうえに、オチの前で笑い始め、オチの部分では自分が1番楽しそうに笑われる方なので、こちらとしてはどうしても温度感に差が出る。いや、そもそもオチがある話の方が稀であった。
そのキャピキャピ感が、父と私には全くないので、大変に申し訳ないが(しれっ)と聞く結果になる。
「お母さんって、もしかしてお家の中で浮いてる?」と母が気付いたのは私が大学生の頃であった。
驚愕した。
娘はその件については、幼稚園の頃から知っていたので。

でも、そんな母が食後に必ず本を読み聞かせるという事を私が小3になるまで欠かさずに続けてくれた。その素敵な習慣のおかげで、本が大好きだし、私の中の何か"核"になっている。

もちろん、それ以外にもたくさんたくさん数えきれない"何か"をもらっているけれど、食後の読書の時間への感謝はいつかしっかり伝えたいな、と思った。

親からの愛情をくすぐったく感じたり、時々「わかってるってば」と言い返したくなる事が、どれだけ幸せな事なのか、と改めて思う。

息子を思うあまりに空回りする父、それに対してちょっと冷たくしてしまう息子、あぁ悪かったなと思い息子が歩み寄ると、父は拗ねている。空気を変えようと違う話題をふる息子、そうすると父がまた空回り、という可愛くて優しくてちょっと切ないシーソーゲーム。

我が家だけではないんだな、という安心感にあぐらをかかずに、両親の世間話をちゃんと聞こう、ちゃんと自分の話をしようと思った。
むぅ

むぅ