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第七の封印のryosukeのレビュー・感想・評価

第七の封印(1956年製作の映画)
4.5
のっけから早速死神は姿を現し、従者が遺体を見て「雄弁でしたよ」なんていうイカしたセリフが出てくる。全編死のイメージで溢れかえっていながら、意外に軽いコメディタッチも侵入してくる。死神がのこぎりでせっせと木を切って殺害するシーンなど笑ってしまう。死は茶化すしかないということでもある。
「死」のビジュアルもチェスのアイデアも素敵。「私は誰も見逃さない」
ベルイマンの女性への(逆?)恨みが溢れ出しているのも可笑しい。
荒々しい風景と曇り空が重々しい雰囲気を醸し出す。コージンツェフ「ハムレット」はかなり本作の影響下にありそう。
「処女の泉」でもクローズアップされていた天窓に消えていく煙は、本作では暗闇、無に吸い込まれて行く人間の運命を暗示するかのように映し出される。
教会の告解室に死神が潜んでいるなんて最高過ぎるアイデア。
お気楽な旅芸人の舞台がムチでお互いを打ち合う異様な儀式に飲み込まれたり、平和な草原でのひと時にサッと死神がカットインしてきたり、という落差の演出はあざとい気もするがやはりインパクト大。
ラストの自宅のシーンでの、皆が目線を向けた方角に動いていく基本的なカメラワークは、目線の先にあるものなど決まっているのに凄まじい緊張感を持っている。暗闇で展開されていた物語は旅芸人夫妻のいる明るく開けた場所に移る。気楽に人生を楽しんだものだけが死神を逃れ、画面の奥へと道が繋がっていくことになる。
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