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スペルズ/呪文のhorahukiのレビュー・感想・評価

スペルズ/呪文(2019年製作の映画)
3.3
溺れても7分間は脳は死なない!

そんな良くわからんない知識を得られるロシア産ホラー映画。(良い意味で)色んなホラー映画からアイデアを拝借して繋ぎ合わせました感。根底にあるのは結構古臭い題材で、古典怪奇小説とかにありそう。ホーソーン原作の『恐怖の夜』がそうだったし、最近だと『喰らう家』も近いかな。あと、『Mirror 鏡の中』(『ミラーズ』)と『ポルターガイスト』『インシディアス』あたりはガッツリ意識してるよね。

監督さんが若いみたいなんで、小説・映画問わずめちゃくちゃホラー好きなのかな?とか思って嬉しくなってたら、次作は『ハチとパルマの物語』…。全然知らないけど、絶対ホラーじゃないよね😅ガッカリだよ!

そんで本作は、親を無くして孤児院?に連れてこられた姉と弟が、スペードの女王っていう「〇〇したら願いが叶う」的な良くある遊びに巻き込まれて、そのせいで召喚されちゃったスペードの女王にあっちの世界に連れてかれそうになるお話。私は見てないのだけど、『ミラーズ呪怨鏡』というロシア産ホラーもスペードの女王題材のよう。原題も同じだし、よっぽど国民に根付いてる都市伝説なんやろね。

本作のスペードの女王さんは、願いはちゃんと叶えてくれるんだけど、最悪な方法で叶えてしまうという超意地悪な人。しかも願い事した後に「こんなんちゃうやん!」ってクレームを入れようもんなら逆ギレされる…。そんなめんど臭い女に関わっちゃったわけだから、そう簡単に逃げ切れるわけもなく…。

生と死を姉と母で対比させ、姉弟間の内面的な確執をそこに絡め、弟くんにとっての「願い」を死から生(絶望から希望)へと傾かせていく様を描くという、王道なオカルトホラーらしいポジティブな展開を見せるのだけど、まさかのラストには驚き。そこも含めて既存ホラーのアイデアから拝借してるわけだから、流石にオリジナリティが薄く感じてしまうから勿体ないなって印象。

スペードの女王さんについては背景事情が詳しく描かれないのだけど、恐らく校長が語っていたことが真実なのかな。どちらにしても鏡という自己を映し出すアイテムによって、内面的な自省へと物語を進めるための装置なのだから、詳しく描く必要もないし、丁度いい塩梅じゃないかなって思った。

少し前にゴーゴリシリーズを見たけど、ロシアホラーは暗い映像の中で消え入りそうな光なりアイテムなりの装飾品が映えるような画面作りが綺麗で好き。その映像的な明暗の対比が物語にも生きてくるように意識してるのかどうかはわからないけど、この映像だからこそ(物語的な)微かな光が映えるわけで、それがあのラストにも響いてくるのだからうまい。
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