るるびっち

83歳のやさしいスパイのるるびっちのレビュー・感想・評価

83歳のやさしいスパイ(2020年製作の映画)
3.7
スパイとして老人ホームに入るお爺ちゃんが、中々のモテ男だ。
本来目立てはいけないのだが、キングに選ばれる程のモテっぷり。
服の色使いが良く身綺麗にしているし、とても紳士的で穏やかだ。
何より聞き上手で相手の話を丹念に聞く。勿論スパイとして情報を聞き出すのが仕事なのだが、元々女性の話を聞くのが上手い。
年を取っても心配事や不安は消えないらしい。
いやむしろ、年を取れば取るほど不安は増えるのだろう。
物忘れがひどくなった、先のことが不安だ、家族が面会に来ない、寂しい、以前できたことができなくなった。
不安は増えていく。
年を取ると安泰だとか、年を取れば穏やかになるとか、不安がなくなるなんてことはないのだ。
そういった彼女達の不安を吸収するのが上手い。
キチンと話を聞いて大丈夫ですよーとか、あなたはとても素晴らしいとかなだめるのが上手い。
だからモテる。
爺さんになっても、愛される人間になりたいなーと思った。
それには自己顕示欲は程々にして相手の話に共感し耳を傾け、不安を取り去る優しさや、微笑みや包容力を身につけないといけない。
勿論こざっぱりしないといけない。そして何より紳士的でなければいけないのだ。

物語としては、社会生活の中で疑心暗鬼になったり猜疑的になる現代人の嫌な部分を批判する話でもある。
世間を複雑にしているのは自分自身。
目の前の人を大事にすることから始めよう。
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