Jaya

ファーザーのJayaのネタバレレビュー・内容・結末

ファーザー(2020年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

認知症になった父アンソニーの一人称の世界が描かれるお話。名前がアンソニーなのは偶然なのか意図的なのか…。

構図や撮影は凡庸に感じました。キャラ付けもかなり類型的。ただしそれもどこまで意図的なのかはよく分からない。

全てはアンソニーの記憶という視点で、常に髪がセットされていたのもそのためかと思いました。既視感のように現在から過去が生成され混濁し、といって記憶が瓦解するわけでもなく、大胆な捏造があるわけではないという様態をかなり上手く表現していたのでは、と思います。

結局のところ認知症患者本人でないと分からないことではあるのでしょうが、それでも認知症を観客が体験しているかのような構成。実際の入念な取材を元にしたものだと思いたいです。

さらに、アンソニーの演技がハマっているというよりもキレまくり。曖昧と正気を行き来する老人を見事に演じていました。彼でなければ、これほどの没入感は得られなかったのでは。

哀れむでもなく、ただただ当人の現実に迫ることを意図し、それを映画にしかできない手法でリアリティをもって提示することに成功している名作でした。

実際の患者の世界はやはり分からないのだとは思いますが、しかしこのチラシの煽り文句はさすがに酷い…。
Jaya

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