Shingo

スペース・スウィーパーズのShingoのレビュー・感想・評価

スペース・スウィーパーズ(2020年製作の映画)
2.8
予告を見た時には、韓国版のガーディアンズ・オブ・ギャラクシーなのかなと思ったけど、どっちかと言えばカウボーイ・ビバップだった。
軌道上に散乱する宇宙ゴミを回収して、金に換える宇宙掃除人。何かとやりすぎて借金まみれ、でも過去の経歴は一癖も二癖もある凄腕ぞろい。その設定だけでもビバップ風だが、そこにナノマシンを自在に操作できる子供が登場。まるで凄腕ハッカーのエドのようだ。

地球が荒廃していて、新天地を宇宙に求めるというのはよくある設定だが、火星をテラフォーミングできる技術があるなら、地球だって元に戻せるんじゃないの?少しSFをかじった人なら誰でも引っかかる伏線は、後半になってちゃんと回収される。
全体に設定のゆるいSFではあるが、その作品世界の中ではちゃんと辻褄が合っているので、意外と手堅く作られている印象を受ける。映像的にも、若干のブレラン風味とスター・ウォーズ風味が混じり、ハイテクとローテクが混在した世界観は割と好きだ。

特に後半、宇宙船でのドッグ・ファイトはスター・ウォーズを彷彿とさせるもので、構造物の隙間をギリギリですり抜けたり、デブリとナノマシンが集積している地帯を突破する場面は、手に汗握る。さらに、そのナノマシンがラストの伏線になっていて、ベタな展開ながらも上手くまとまっている。
掃除人仲間が、主人公たちを助けるために集結するシーンは、完全に「スカイウォーカーの夜明け」のオマージュであるが、何なら本家よりよくできている感があった。
さすが、制作費に240億ウォンもかけただけのことはある。

地球を完全に壊滅させるため、コロニーを落下させるというのはガンダムお得意の展開だが、これを阻止し、さらにコンニムを助けるために主人公たちがとる行動は、なかなかに胸アツであった。ちょっと考えれば予想できる展開ではあるが、最後に敵ボスに一泡吹かせるところも含めて、いい意味で裏切られた。

SF映画として決して"新しい"ものではなく、むしろ既存の作品のパッチワークと言ってもいい内容だ。だが、各登場人物を程よく掘り下げ、過不足なく活躍させる描き方はこなれているし、敵のボスにも悲惨な生い立ちがあるだろうことを匂わせ、選民思想・優性思想の権化として存在感がある。
バブズが銛を片手に宇宙船から宇宙船に飛び移って戦う場面など、まるでワンピースや進撃の巨人のようだが、全体に漫画チックだ。その分、SF初心者でも気軽に見られるし、外連味もある。
難しいテーマを内包したSFもいいが、このくらい頭からっぽで楽しめるSFも大好物だ。
あとエンドロールで、テホの娘がノートに書いた詩が歌で流れるところ、ちょっと泣けた。(間違ってたらゴメン)

ピッコマでウェブコミックが連載中とのことで、機会があればこちらも読んでみたい。
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