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僕と頭の中の落書きたちの小のネタバレレビュー・内容・結末

僕と頭の中の落書きたち(2020年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

人生の真実を語る神父役のアンディ・ガルシアが、ただただカッコいい。

高校3年男子の主人公は統合失調症を患い苦しんでいるけれど、青春映画らしく、好きな女の子や家族などとアレコレありながら、病を取り除くのではなく、病を抱える自分自身を受け入れ、ハッピーエンドなお話。

主人公の頭の中には得体のしれないモヤモヤが現れるが、これは不安や被害妄想のようなもの。また、3人の人物(男2人、女1人)として頭の中に存在するけど、これは普段抑えつけている欲望。

そして主人公は精神的ストレスに対し、めちゃくちゃに振る舞いたい感情、衝動への抑えが時として効かなくなるらしい。

めちゃくちゃに振る舞いたいと思う気持ちがあることはオジサンだって同じ。だから本作は病に苦しむ人のことだけではなく、本作を観る人のことも描いているなあと、思ったら、授業の一貫で告解に来た主人公にガルシア先生がこう語っていた。

<大人というものは必死に努力して正気を保っている。その意味では君は大人に近いな。>

ああ、全くその通り。しかしモヤモヤは年々増えるばかり。これからどうやって正気を保って行けば良いのですか、ガルシア先生。するとクライマックス手前で主人公に問われていた告解の意味を語ることで教えてくれた。

<罪の告白とは自分に欠点があることを認めることだ。自分の欠点を認めることでその欠点に向きあう機会と強さが与えられる。だから告解するんだ。>

THE BLUE HEARTSの曲『人にやさしく』に<叫ばなければやりきれない思いを ああ大切に捨てないで>という一節があるけれど、長年疑問だったこの言葉が腑に落ちたような気がした。

モヤモヤの根本原因は自分の欠点や弱さなんだと思う。そして欠点や弱さは取り除いたり、目をそむけたりするのではなく、認め、向き合い、受け入れることで、モヤモヤへの対処法が見つかるのだろうと思う。

きっと不安、被害妄想、やりきれない思いは自分自身を良く知り、良く生きるための教材で、だから<大切に捨てないで>ということなのだろうと。

過去、同種のことを頭でわかったような気になってもすぐ忘れていたけれど、これってホントに大事、と実感している今日この頃。
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