Shingo

ザ・ファブル 殺さない殺し屋のShingoのネタバレレビュー・内容・結末

3.2

このレビューはネタバレを含みます

予想以上に面白かった。2作目ということで、主人公ファブルについて説明する必要がなくなり、その分、ストーリーとアクションに尺を割くことができている。前作以上に、ファブルの「只者じゃない感」が増していて、それが超人的なアクションにも説得力を持たせていた。

冒頭から、駐車場内でのカースタント。殺し屋ながら、無関係な少女を巻き込まないために、必死で救出を試みる。本物の車を暴走させ、最上階から地面に落下させるという、邦画ではなかなか見られない金のかかった演出が見事。物語の導入部としても、100点の出来と言っていい。

これ以降も、各場面に無駄がない。
ウツボと鈴木が山中でチンピラを始末する場面も、ショベルカーで首つりというキャッチーな演出を交えつつ、クライマックスへの伏線として機能しているし、その直前の講演会との落差もあって、ウツボという人物の異様さがよく表れている。
講演会で飴を渡した少女が、後にマンションでの襲撃作戦に利用され、さらにその少女が予想外の行動をするきっかけとして、風船が効果的に使用される。
公園の鉄棒でリハビリする場面も、最後の場面に活きてくる。歯車がかっちり噛み合った心地よい脚本&演出だ。

ウツボのキャラクターは、基本的に悪党なのだが、それだけではない部分も感じさせる。脅迫して金を巻き上げる相手も、それなりに脛に傷がある連中であるし、NPO法人として公園の遊具を視察したりするのも、金のためとは言え、それだけの理由で「善人のフリ」をできるものだろうか。
どこかで「社会を正したい」という思いがあり、それが歪んだ形で表出している。売春を斡旋していたのも、売春を悪と思うからこそ、それを生業とする女性から金をむしり取っていたのではないか。

ヒナコを手元に置いているのも、歪んだ愛情表現に思える。
「社会を正したい」ウツボにとって、最も憎むべきは自分自身であり、いつかヒナコの手によって殺されることを密かに望んでいたようにも思える。鈴木もそれを薄々感じていたからこそ、最後の瞬間、ウツボに止めを刺したのかも知れない。
原作を読んでいないので、見当違いな想像かも知れないが…。ヒナコがウツボに手を合わせたのは、やはり憎しみだけではない何かを感じ取っていたからだと思う。

本作の見どころは、何といってもマンション襲撃場面でのアクションだが、舞台設定がすこぶる面白い。狭い通路と高低差を利用した立体的な戦闘描写、幾重にも仕掛けられたトラップ、常にスナイパーに狙われているという緊張感。壁と壁の隙間を落下しながら敵を倒し、花を踏まずに着地するところは、カーズ様かよ!って突っ込んでしまった。
一番の見せ場である足場の崩落シーンも、予告で知ってはいたものの、改めてスクリーンで見るとやはり驚嘆せざるを得ない。思いついても、実写でなかなかできることではないだろう。それだけ、制作サイドの本気度が伝わってくる。

アクションのピークを中盤に置いて、ラストはほとんどアクションなしとしたのも良かった。地雷を踏んだヒナコを救うため、ショベルをあんな風に使うとは、まったくの予想外。ヒナコがウツボに銃を向ける、そして車椅子から立つところまでは予想できても、まさかこんな救出劇が待っているとはね。
ちょっとファブルがいい人過ぎ、ヒーロー過ぎる気もするのだが、実写版はもうこれでいいのかも知れない。続編にも期待!
Shingo

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