平野レミゼラブル

プリンセス・プリンシパル Crown Handler 第2章の平野レミゼラブルのネタバレレビュー・内容・結末

3.6

このレビューはネタバレを含みます

【ビックリドッキリメカのギミックが劇場で火を噴く!スチームパンク・スパイアクション!!】
美少女スパイアクションアニメ最終章、待望の2話目。
もう予告編で発せられる「ケイバーライト爆弾」といううろんすぎるにも程があるワードの時点で無限に笑い転げていたんですが、第2章アバンから海上での実験で戦艦を周囲の空間ごと“消し飛ばす”ご無体すぎる威力を見せつけることで大爆笑していました。
気軽に作るな!!こんなトンデモ大量破壊兵器を!!!!!

帝国・共和国両国ともに開発競争に勤しんでおり、共和国側がいち早く開発に成功したとのことなんですけど、そこそこ大きいものの普通に量産可能で、早速3個も作っちゃってる時点でヤバイです。
言うて放射能ない分、核よかマシなのかなとも一瞬思いましたが、TV版1話の時点でケイバーライト障害なる存在が明かされてたし普通にヤベェーな……

あと、アバンで時間かけて爆破実験を行うサマを描いてるのに、OP終わったら描写なしに盗まれていて帝国側に運び込まれているのはもっとヤバイです。しかも3個全部。こんなヤベェーのがぽこじゃが盗まれたら地球が滅びちゃうだろうが!!共和国はいい加減セコムを強化しろ!!

そんなわけで、今回はこの盗まれたケイバーライト爆弾の回収及び証拠隠滅がチーム白鳩の任務となります。

アバンのアクション除いては、じっくりビショップとの頭脳戦を繰り広げていて絵的には結構地味だった第1章とは対極に、第2章は爆弾奪還ミッションということでアクション主体です。感覚としてはTV版第3〜5話に近しく、割と古式ゆかしい荒唐無稽なスパイアクション映画って感じですね。ある意味、こっちの方こそ正統派劇場版ストーリーって感じすらある。
また、いよいよ本格的に最終章副題にも付けられたCrown(王冠)絡みの陰謀も解禁。継承権第4位のプリンセス以上の継承者が勢揃いし、いよいよ王位継承戦が激化していくことになるのです。OP終わりから早速、新大陸総督の継承権第3位“アーカム公”リチャードが何者かに狙撃される暗殺未遂事件も発生しますしね!
帝国・共和国とは別の狙いを持つ第三勢力まで入り乱れた混沌の中でのミッションということで、TV版以上のスリリングさが約束されます。

正直なところ第1章以上に第1章っぽさは強いと言うか、本作でのミッション自体の見応えはあるものの、物語としては最終章での登場人物紹介と勢力図確認が主であり「繋ぎ」の印象は強めです。
特にラストで明かされる今回の事件の黒幕の正体は、第3章以降にチーム白鳩が立ち向かうべき敵の輪郭をハッキリとさせ、ここからが盛り上がりどころとわかりやすく演出しております。

その為、今回の事件単体としては冒頭のケイバーライト爆弾の御無体な威力に反して大人しめな印象。話の内容もアクション主体なので、実は特筆する箇所もあまりなかったり。まあ、あくまで共和国側は爆弾を抑止力のカードとして切るつもりらしいので、今回派手にやらかされても困っちゃいますからね。
とは言え、そこはケイバーライト爆弾の他でも技術革新が凄まじいプリプリ世界。ケイバーライト爆弾を隠していた劇場の大道具に火を噴く巨大ドラゴンロボットがしれっと登場したり、あまつさえ乱戦の最中にドラゴンロボが乱入したりでトンチキじみた派手な見せ場が用意されてるので退屈しません。
今回のアクションは、全体的にこうしたビックリドッキリメカのギミックをフル活用する形で組まれており、ケイバーライト爆弾奪還時の機巧を駆使した力技も楽しかった。まあ冒頭でヤバイ威力を見せつけられただけに「こんな雑な扱いしてんじゃねーッ!!」って別な意味でヒヤヒヤさせられましたが。
ドライかつ非情な展開によるハードボイルドで誤魔化されているものの、プリプリ世界のリアリティラインは結構低めのスチームパンクなんで、こうしたビックリドッキリメカが跋扈しても問題ないのは強いですね、しかし。

個人の戦いとしては、前回ビショップを暗殺し、次回予告でもちせ殿と激戦を繰り広げていた褐色アサシンが強い強い。不意打ちとはいえアンジェが持つ証拠品をいきなり隠滅し、駆けつけたちせ殿相手にマチェーテで互角以上に斬り結ぶとかヤベェー。
しかもコイツ、隠密暗殺に狙撃までこなすオールラウンダータイプの武の極致なんで、戦闘面での暫定ラスボスですね。未だに一言も発しないのもかなり不気味。

楽しい楽しい大味アクションだけでなく、細やかなスパイ描写をサラッと描いているのもプリプリの魅力の一つ。アンジェが鍵開けをしている最中に、ちせ殿と話しているドロシーがコンパクトを取り出して開いている描写を説明もなしにこなしているとことか良かったですね。ちゃんと後方確認を怠っていない。偉い!!
一方、ちせ殿ははじめてのコーヒーで、ゲエッという顔になりつつも、ちゃんと最後までしっかり飲みました。偉い!!

まあお口に合ってなかったどころか、急いで次の現場に向かうって状況で律儀に飲み切っているちせ殿はスパイとしてどうかとも思うんですが、可愛いからオッケーです。
そして、何事もソツなくこなしつつアンジェの瞬間記憶能力などにはしっかりドン引くドロシーもピストルによる精密狙撃を成功させたり、スパイ衣装の鼠径部部分がえっちだったりで大活躍なのも良かったです。
ただ、ドロシーに関しては一番死にそうなポジションなんでヒヤヒヤしているんですけどね……今回も予告の時点で爆発に巻き込まれていてウワーッ!!ってなりましたが、割と無傷だったんでホッとしました。ドロシー滅茶苦茶頑丈。
とは言え、交替した直後の見張りが殺害されていたり、そうでなくてもトラップハウス突入時のメンバーにちせ殿がいなかったらアンジェ諸共殺されていただろうって辺り、かなり今回も綱渡り気味でしたが……マジで怖ェーよ、あの褐色軍人アサシン……

仲間の活躍だと他にプリンセスが継承権第2位のメアリーに優しさを見せるところが良かったです。
見るからに黒星紅白な幼女という外見に違わず、気弱で引っ込み思案なメアリーは明らかに権謀術数渦巻く王宮公務に向いておりません。そんなメアリーをプリンセスは実の妹のように接して事あるごとにサポートする優しさを見せるのですが、プリンセスの出生を考えるとその優しさは表面上以上のものと映るのですよ。
偽物の王女であるプリンセスはTV版8話で描かれたように、バレたら死ぬという過酷すぎる重圧に押し潰されそうになりながらも王女として必要な技能を身に付けた。そんな彼女からしたらメアリーの苦悩なんて「恵まれた立場に対して当然の責務」くらいに思えてしまう筈なのに、しっかり彼女に寄り添ってサポートしている。アンジェが心酔するのもわかる程にやはりプリンセスは優しいです。
しかし、プリンセスの最終目標である帝国の主権を握るを達成するためには、いずれメアリーをも蹴落とさないといけない局面は来ます。このことにプリンセスは気付いているのかというところも最終章のメインテーマとなりそうですね。特にラストで本性が明らかになったリチャードとの対比としても。


リチャードが黒幕な件に関しては「目立ちたがり屋の暗殺未遂という状況」「男のキャラデザが淡白なプリプリにしては装飾過多」「アーカム公とかいうSAN値直葬の物々しい異名」等々から「知ってた」レベルの真相ではありましたが、彼の目標である「主権を握って新しい風による変革をもたらす」ことは実際のところプリンセスとそう変わってないというのが皮肉。
言うて身内すら平気で殺すリチャードの言う「新しい風」がもたらすプランはロクでもないことが予想されるので、プリンセスと敵対するのは確定なんですが、プリンセスが持つ自己矛盾を対決しつつどう解消していくのかがドラマになりますね。
しかしリチャード、周りを確認しないでクツクツと笑ってしまって馬脚を表したりと「嘘つき」としての格が低いのが「嘘」をテーマにするプリプリにおいて致命的ですが、彼の持つ褐色アサシンを始めとした戦力は普通に脅威。新大陸総督として持っている戦力は金カムの第七師団めいてそうですしね。ゼッテェー変態じみた武装集団でしょ、新大陸軍。

そんな感じで個のエピソードとしての満足感はそのままに、いよいよ本格始動の最終章がますます楽しみになる第2章でした。
リチャードの持つ戦力やプランは勿論気になるし、ノルマンディー公もリチャードに取って代わられるようなタマではないだろうから注意しなくちゃだし。あとゼルダ、お前は今どこで、誰と戦っている……
期待すると言えば、劇場版で現状目立った活躍がないベアトの活躍もですね……そういや今回、唐突に緒方賢一の声が聞こえたんで「お!ベアトの声帯!!」と思ったら、特に活用されることもない一般通過緒方賢一だったのビックリでしたからね。これからはベアトの活躍に合わせてじゃんじゃんモブの声を豪華にしていけ。

オススメ!