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殺人鬼から逃げる夜のhorahukiのレビュー・感想・評価

殺人鬼から逃げる夜(2020年製作の映画)
3.8
かき消される声

延々とイライラ&胸糞のジャブを打ち続けてくるタイトル通りなスリラー。ずっと逃げ続けるだけの映画でここまでの上映時間を持たせてしまうのは驚異的!序盤で警察署に到着しても一切解決の兆しすら見せないあたりが安心安定の某国警察クオリティ!「申し訳ありませんでした」じゃねんだわ💢

とにかく馬鹿にされることが大嫌いで狡猾なことくらいしか殺人鬼については描かれず、物凄く大きなコンプレックスを抱えてることに対する反動として殺人をしてるんだな…程度。どちらかというと主人公たちを都度都度最悪の状況へと転落させるための装置化させている。というか、殺人鬼さんが途中から麒麟の川島さんにしか見えなくて笑った🤣髪下ろして笑ってるとことかすんごい似てる!

そして、潜在的な弱者差別を炙り出し批判するような内容に感服。終始、話せる・話せないを主軸にスリルと胸糞を積み重ね、聞き手側が瞬時の判断を下すことにとって、言葉というのがどれほど重く機能するのか…を徹底的に見せつけてくる。抗弁を封じられ強制的に欠席判決に追い込まれるかのようなどうしようもなさを作り上げる一端を担っているのは、声なき者を無視する(警察も含めた)大衆。「大きな声」によってその場の空気→世論が作り出されていく様をまざまざと見せられている感じ。

マスコミの切り抜き報道を見て事件全容を知った気になるテレビの前の視聴者のような存在として、そういった周囲の見物人たちを配置する意図を感じるし、その切り抜きをするマスコミの役目を殺人鬼が言葉と巧みな状況コントロールによって担ってしまっているために被害者サイドは逃げ場がない。「大きな声」という武器によって改変された情報の前には、弱者の悲鳴は掻き消えるしかないという絶望感が本当に苦しい。それに対する最大限の皮肉を込めたラストの一撃とかサイコー!

ガッツリ賛否割れてるけど、私は好きでした!
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