いの

パリ13区のいののネタバレレビュー・内容・結末

パリ13区(2021年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

『ディーパンの闘い』で、高層団地を舞台に移民をめぐる抗争を描いたジャック・オディアール。パリ13区は、高層住宅が連なる再開発地区で、アジア系移民も多く暮らす場所らしい。今作では高層住宅&移民を下地としながらも、女性2人との共同脚本によって、性や生や恋愛の“今”を 軽やかに描いたのだと思う。
炎天下の戸外で雑用係の任務wを果たした日の仕事帰りだったから、ほんの少しだけ寝落ちしたのはやむを得ないと自分でも思う。推定98%くらいは集中して観たんです。

フランス映画でジャンジャンセックスシーンがあるのはゼンゼンいやじゃなくてむしろドンドンやってほしい、窮屈な日本よりもグングン良い、と普段思ってるけど、この映画のセックスシーンには、ひとつも萌えなかった。ガラガラの映画館で1列に1人以下状態なのに、なぜあなたはわたしの近くに座るのだ? と問いただしたくもなったが、近くに見知らぬ男性が座っても、わたしの感情は上映中ちっとも困りはしなかった。つまり映画はぜんぜんエロくない。あんなにセックスシーンがあったのに。セリーヌ・シアマには「燃ゆる~」いっぱつでわたしの心全部を持っていかれたと思ったのに、そのあとで観た「トムボーイ」でわたしはとても懐疑的になってしまって現在にいたっている。わからないのはエミリーで、好きでもない男と仕事の休憩時間にセックスして、そのあと職場に戻り なぜふわっと幸せいっぱいに踊るのか解せぬ。最後に愛を告白されるのもよく判らぬ。そっか、コメディだと思って観た方が良かったんだ。深い意味があるだろうと思ってのぞんだアタシがいくない。カミーユを演じたマキタ・サンバはこれからの活躍に着目していきたい。ノエミ・メルランは大好きで、この映画でもひときわ光っていたと思う。ノエミが演じた女性の名前は「ノラ」、その役名はイプセンに由来しているのかなと思ったりした。ポルノチャットを機に惹かれあう場面は、なんだか良かったけど、でも、あれでは、自分が好きということになっちゃうんじゃないかしら。これは他者への愛を求める話ではなくて、各々方の自己愛を求める話のような気もしてきた。自分の孤独を埋めるのは自分とそっくりな人でした。って、それでいいのかな。いやいや、そこからはじまればいいんだね。そうです、そこからはじまればいいんです。ノエミ・メルランとジェニー・ベスの深夜のチャットの場面、好きです。あと、ノエミがグーで殴るとこ。グーで殴って走り去るとき、ヤターってうれしそうなとこ。
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