むぅ

モガディシュ 脱出までの14日間のむぅのレビュー・感想・評価

4.1
"仲間は同じ釜の飯を食う"

『ゴロツキはいつも食卓を襲う フード理論とステレオタイプフード50 /福田里香著』
1、善人はフードをおいしそうに食べる
2、正体不明者はフードを食べない
3、悪人はフードを粗末に扱う
という物語における"フード三原則"を謳っている本なのだが、どちらかというと"フードあるある"のエッセイといった要素が強い。

その一節を思い出す印象的な食事シーンがあった。


1991年ソマリア内戦に巻き込まれた韓国と北朝鮮の大使館員たちの生死をかけた脱出を描く、実話に基づく人間ドラマ。


韓国も北朝鮮も国連の加盟を目指し、多数の投票権を持つアフリカ諸国にロビー活動をする中での事件なのだが、ソウル五輪の翌年だという今作の時間軸を知り、ちょっと驚く。五輪開催国に国連加盟は関係なかったのかなと思うと意外な気がしたからだった。しかもその感覚が見当はずれなのかどうなのかさえピンとこないので自分の世界情勢への疎さや知識不足にしょぼんとした。
でもそんな私でも韓国と北朝鮮の関係性はある程度はわかるので、今作の"呉越同舟"がどれほどのものかは想像がつく。
それを裏付けているのが『愛の不時着』の存在が大きい事にこれまたうーんではあるのだが。

その両国の食事シーンが良かった。『みかんの丘』とも少し重なる。
基本、楽しいご飯はいいご飯、と思っている。大切な人たちとの食事は例え味がいまいちでも楽しいと感じるし、それさえ笑い話になったりする。どんなに美味しい食事でも苦手な人との食事は味がしなかったりする。
その食事シーンがお見事!だった。

「今日本シリーズがアツくて!」
「うん」
「野球ね?」
「いや待って、野球だってことはさすがに知ってるから」
というやりとりが友人と発生するほど、スポーツと無関係に生きていて、アクションも実はそれと同じくらい私には遠い世界。
でも今作のカーチェイスがど迫力なのはわかった。

"カーチェイスではね飛ばされるのはいつも果物屋"
ちょっぴり期待した"あるある"は出てこなかったけれど。


10月29日ソマリア教育省前で2度の爆発、少なくとも100人死亡、約300人負傷。

そのニュースを思い出しながら観た。

そして私だったら自分が困難に陥った際、敵対する人を頼れるだろうか。また敵対する相手に手を差し伸べられるだろうかと考えた。
むぅ

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