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スワンソングのbackpackerのレビュー・感想・評価

スワンソング(2021年製作の映画)
4.0
第34回東京国際映画祭 鑑賞3作目

孤独なゲイの老人の海容の道のりを自由奔放に描く、シルバー・ロードムービー。

ーーー【あらすじ】ーーー
"街一番のヘアドレッサー"という栄光の過去を持つゲイの老人パットは、今は引退し施設で暮らしている。
ある日、かつて33年間メイクアップした女優リタの死化粧を依頼されたことから、丁寧に折り畳んでいた過去の思い出が開け放たれることに。
とある出来事からリタに複雑な感情を抱えるパットは、一度は依頼を断るが、抑えきれぬ激情から老骨に鞭打ち葬儀社へと歩き出す。
葬儀社への遠き道のりを進むパットは、在りし日の追憶と現実の変化を前に、自分の感情と人生の道のりにケリを付けにいく……。
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題名の『スワンソング』とは、「人が亡くなる直前に人生で最高の作品を残す」というヨーロッパの伝承及び比喩表現のことで、まさに本作を体現した秀逸な題名。

ラース・フォン・トリアー作品常連の名優ウド・キアが、皮肉屋で我儘で"泰然自若に見える"(実際は様々な事に動揺します)老人こと、実在したヘアドレッサーのパット・ピッツェンバーガーを好演。
彼の自信満々な立ち居振る舞いの裏には、自分が生きてきた人生を振り返り、その過去にどう向き合ばいいかわからない混乱があり、ウド・キアの哀愁漂う眼差しはベストマッチ。

いつまでも美しく、何者にも縛られぬ。しかして、その瞳の奥には、容易には分かち合えぬ悲しみが溢れる……。
感動の良作でございました。
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