このレビューはネタバレを含みます
超豪華俳優大集結な、ポップでどこかもの悲しいウェス・アンダーソン渾身の怪作！
架空の舞台と、そのドキュメンタリーと、そのドキュメンタリーの裏側とを、幾つもの視点をもってして画面に刻み込み、俳優たちと彼らから立ち上がる物語を首尾よく描き切っていました。
複雑怪奇な入れ子構造によって、不明瞭な点は腐るほどあります。
正直、全部を噛み砕くことなど、無謀に等しいです。
それでも、舞台のシークエンスにおいての、非現実的なポップで可愛らしいルックも然ることながら、そこら中に散りばめられたコメディシークエンスが小気味よく展開されることで、表層上だけでも本作を楽しむことができるようになっていたと思います。
本筋が難解になっているからこそ、大多数の人間が楽しめる部分があったのは玄人以外を見捨ててている訳ではないとわかって良かったです。
また、虚構が現実と重なっていき、ドキュメンタリーの裏側にまで辿り着いた時、削り取られた本編たる舞台のキャラクター、オーギーの妻役が登場します。
その邂逅が、舞台の行き詰まりから主人公の背中を押すきっかけとなっていく過程はとても美しく、虚構も現実も飛び越えた人間賛歌へと昇華されていくようで、大味止まりでは終わらない素晴らしいカタルシスがありました。
総じて、難解な部分が目立ってはいましたが、悲喜こもごもな、俳優という存在自体が引っ張っていくドラマで魅せる作品でした！
