このレビューはネタバレを含みます
離婚後故郷に帰っていたシングルマザーは、田舎に移りん住んで林業に就いた男と出会い再婚する。幸せな時を過ごす家族だが、夫が仕事中の事故で帰らぬ人となってしまう。それから一周忌で訪れた彼の親族によって、夫が周囲に名乗っていた人物とは全くの別人であることが判明する。妻は知人の弁護士に夫の素性の調査を依頼するのだが......という話。
他人に成りすまして生きた男の過去を追うことで登場人物たちの苦悩や生きた意義が顕になっていく秀逸な人間ドラマ。
妻や連れ子の長男に愛を注いでいた夫の隠された壮絶な人生を追うことで、在日三世として日本で生まれた弁護士が彼の境遇に自分の苦悩を重ねあわせて、調査にのめり込んでいくところが良かった。夫の秘密を知って戸惑いながらも、彼のことを慕い続ける妻と息子の描写も良かった。本物の夫の秘密や身分のロンダリングなど観客をひきつける要素も効果的に機能していた。長男がとても良い子で、健気でいじらしかった。
難点は結局、本物が身分を交換した動機や、複数回身分ロンダリングを繰り返した真相がそれほど物語に深く関連しておらず、意外性もなかったことかなあと。また、ヘイトスピーチなどあまりに露悪的で過剰な描写があってそこはイマイチだった。最後の弁護士のbarでの対話は謎めいていて昨今の分り易すぎる邦画とは一線を画すラストはユニークだったけれど、個人的には素直に感動ものの終わり方で良かった気もした。弁護士妻が浮気してたエピソードもいらんかったような......
とはいえ、泣ける要素とスリリングな展開のバランスも良くて久々にじっくりお話を楽しめる作品だった。
ボクサー時代の窪田正孝の肉体美はすごかった。仲野大賀が写真だけの役なのかと思ったら終盤に出てきた。相方弁護士役の小藪さんが思ったより身長高くて意外だった。
