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ベルファストの小のレビュー・感想・評価

ベルファスト(2021年製作の映画)
3.9
ケネス・ブラナー監督の半自伝的作品で、小ぢんまりとした良作という印象。北アイルランド紛争の激化で、プロテスタントの強硬派がカトリック教徒の家を焼き討ちするなど緊張感のある環境にもかかわらず、主人公バディの祖父母のホンワカ感が、作品全体の雰囲気になっている気がする。

宗教に起因した大人たちの対立だけでなく、両親の関係、恋愛など詰め込みすぎじゃね、と思うけれど、これが上手くまとまっている。伏線回収も抜かりなしだし、さすがオスカー脚本賞。

素材を考えると緊張(ストレス)からのカタルシスみたいな物語の定番的感動を生み出せたと思うけど、ブラナー監督は自分自身のホントウ、特にじいちゃんがいて幸せだったということを描きたかったのではないかという気がする。

だって大切なことはじいちゃんが教えてくれているから。

「答えが1つなら紛争など起きんよ」

「一番肝心なのは彼女を愛すること、ただ愛すること、ただ愛するだけ」

「わからないのは聞こうとしないからだ。向こうの問題だ」

「お前はベルファスト15のバディだ。近所の人も皆友達だし、じいちゃんも母さんも父さんもばあちゃんも兄さんも、皆お前の味方だ。お前がどこに行って何になろうと、一生変わらん。それがわかっていれば不幸にならない」

9歳の子どもが大好きなじいちゃんからこんなことを言われたら、それだけで生きていける気がする。普通の良い映画と思っていたけど、少し泣けてきたかも。
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