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一人と四人のbackpackerのレビュー・感想・評価

一人と四人(2021年製作の映画)
4.0
第34回東京国際映画祭 鑑賞4作目

チベット式『ヘイトフル・エイト』のススメ。

映画への造詣が浅い身のため、『ヘイトフル・エイト』しか連想できなかったのですが、「雪に閉ざされた山小屋に集まった正体不明の男たちの、疑心暗鬼と混乱」というシチュエーションが最高ですね。

チベット自治区が舞台となった映画を見るのはおそらく初めてでしたが、90分程の上映時間の中で、中国という広大な面積の大国に多様な民族がおり、またそれぞれの文化・言語・生活様式の違いがあることを、改めて感じることができました。

目新しさはないものの、人を惹きつける巧みな展開がお見事。
フラッシュバックカットによる過去回想がインサートされても、それが真実かどうかわからない不穏さが常につきまとい、全員が信用できません。

なぜ密猟者と森林警察の車が両方ともサイレン付きパトカーなのか?
なぜ山小屋に食料の備蓄が少ないのか?
なぜ同郷の友人が森林監視員の妻からの離婚届を持ってくるのか?
なぜ密猟者の収穫物(鹿のツノや狐の毛皮)が詰まったズタ袋を持っているのか?
なぜ上司の出身地を知っているのか?
なぜ密猟者の銃を持っているのか?
なぜ赤い布を持ってるのか?
なぜ?なぜ?なぜ……?

多くの疑問が渦巻く中、何一つ確信を持てる正解は示されません。
まるで雪原でホワイトアウトしたかのように、男たちの胸中も五里霧中。

真実はどこにあるのか?という会話劇で魅せるカオスな閉鎖空間サスペンス。
かなり面白い作品でしたので、おススメです!
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